Glycolipid
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Vα14NKT細胞による糖脂質抗原認識免疫システム

  Vα14NKT細胞は、均一なVα14抗原受容体をもつこと、また胚発生初期(d9.5)から出現するという特異的な発生分化様式から、T、B、NK細胞につぐ第4のリンパ球と考えられている(1)。生体内では、インターロイキン−4やインターフェロンγの主要産生細胞である一方、抗腫瘍免疫や自己免疫病の発症制御にも関与していることが想定され,その機能は多岐にわたっている。Vα14NKT細胞が非典型的MHCクラスI分子であるマウスCD1d分子を認識していることは判明していたが,マウスCD1d分子がいかなる抗原(リガンド)をVα14NKT細胞に提示しているのかは全く未解決だった。


 我々は、胚発生工学的手法を用いて、Vα14NKT細胞のみを欠損したマウスとVα14NKT細胞のみを有するマウスを作出し、これらを用いた実験で,1997年にVα14NKT細胞のリガンドを同定することに成功した(2)。Vα14抗原受容体が認識するリガンドはスフィンゴ糖脂質(α−ガラクトシルセラミド:α-GalCer)で、CD1d分子の抗原結合溝に結合した形で認識されている(2)。一方、機能面からはα-GalCerによって活性化させたVα14NKT細胞が強力な抗腫瘍活性をもつこともあきらかになった。マウス転移性肝癌モデルにおいて、α-GalCerの投与により癌転移をほぼ完全に抑制できたのである(3)。


  ガラクトシルセラミドは代表的な哺乳類糖脂質のひとつであるが、α-GalCerのようにinner sugarがαアノマーの糖脂質は生体内では未だ発見されていないことから、外来抗原としてVα14NKT細胞を活性化するのかもしれない.最近になりVα14NKT細胞の内因性リガンドのひとつが糖化フォスファチヂルイノシトールであることが報告された(4)。糖脂質をリガンドとしたVα14NKT細胞を介する免疫系が生体内に存在していることは、もはや確実である。ペプチド抗原はT細胞によって認識され、また糖鎖抗原はNK細胞によって認識される。このたび発見されたVα14NKT細胞のリガンドは糖脂質であり、免疫系における役割分担が明確になされている。この意味からも、Vα14NKT細胞を機能的標的細胞とした糖脂質による免疫システムの制御は、今後、immunologyのみでなく、glycobiologyをも範疇とした大きな研究テーマとなるに違 いない。
図
河野 鐵、谷口 克 (千葉大学大学院・医学研究科高次機能系免疫発生学)
References(1) Taniguchi, M et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 11025-11028, 1996
(2) Kawano, T et al. Science 278,1626-1629, 1997
(3) Kawano, T et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 5690-5693, 1998
(4) Joyce S et al. Science 279, 1541-1544, 1998
1998年 6月 15日

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