Glycoscience World 生化学工業株式会社
第3回[エネルギー源]一番身近な活力の素
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第1回
[糖質科学への招待]
生命現象の隅々で
見え隠れする糖鎖

第2回
[受精]
運命の出会いをサポート

第3回
[エネルギー源]
一番身近な活力の素

第4回
[細胞外マトリックス1]
多機能な細胞のプロテクター

第5回
[細胞外マトリックス2]
健康な体を支える裏方―
コンドロイチン硫酸

第6回
[細胞増殖・分化]
細胞のヒソヒソ話を
漏らさず中継―
ヘパラン硫酸と成長因子

第7回
[血液型]
1つ1つ違った「顔」を持つ細胞

第8回
[がん]
「顔」の変貌

第9回
[ウイルス感染]
「顔」見知りを狙い撃ちする
ウイルスたち

第10回
[糖質科学の応用展開]
医療応用への可能性が
広がりつつある糖鎖
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Question
疲れている時は甘い物を食べればよい」という話を聞いたことがあります。一方で、糖分の取りすぎは体によくないと思いますが、このように言われる科学的な根拠はあるのでしょうか?
Answer
脳にとって最も速効性のあるエネルギー源はグルコース(ブドウ糖)だからです。

体内の臓器は一般的に、グルコース(ブドウ糖)という単糖を最も重要なエネルギー源にしていますが、実際には、脂肪、タンパク質もエネルギー源として利用しています。しかし、脳だけは例外で、脂肪、タンパク質はもちろんのこと、グルコース以外の糖質も受け付けません。さらに、脳は全重量のたかだか2%を占めるにすぎないにもかかわらず、全エネルギーの18%を消費します。例えば、体重70kgの成人男性の脳が1日に消費するエネルギー量は、グルコースの重量に換算すると約120gです。脳は、大変な「偏食家」であり、「大食漢」でもあると言えるわけです。

では、脳はこれだけの量のグルコースをどうやって確保しているのでしょうか? 

私たちがふだん口から摂取する糖のほとんどはデンプンとスクロース(砂糖)で、これが主たるグルコースの供給源です。デンプンは多数のグルコースが鎖状につながった物質で、ごはんやパンに豊富に含まれています。しかし、唾液、胃液で徐々に分解され、最終的には小腸でグルコースに分解されて体内に吸収されるため、吸収されるまで時間がかかるという欠点があります。一方、スクロースは、グルコースとフルクトース(果糖)が1つずつ結合したシンプルな物質で、簡単に分解できるという特性があります。小腸で消化吸収されたら、その数十秒後には血液中にグルコースが現れるほどで、スクロースは、脳に手っ取り早くグルコースを供給するのに適した食材なのです。

脳は睡眠中もグルコースを消費し続けますから、起きた直後は血糖値が低くなっています。血糖値が低い状態では脳の活動が低下することが知られていますから、朝食前に頭がスッキリしないのは血糖値が低いためです。

図1 ▲ 人間は、炭水化物を食べなければ生きるためのエネルギーが出てこない。炭水化物が体内に入ると分解されてグルコース(ブドウ糖)になり、それがエネルギー源になる(ATPサイクル)。
Question
もし血糖値の低い状態が長期間続いた場合、人体はどうなるのでしょうか?
Answer
最悪の場合、昏睡状態になり、死に至ることがあります。しかし、人類の歴史は、ある意味飢餓との戦いの歴史でもあったわけで、食料が不足気味でも血糖値を上げる仕組みが体内に何重にも備わっており、現代の日本においてはそれほど心配には及びません。 逆に、ふだんの食生活で最も留意しなければならないのが、高血糖状態の回避です。人類はこれまで上がりすぎた血糖値を下げる必要性があまりなかったためか、血糖値を下げる安全装置としてはインスリンしか備えていません。日本では、この40年間で糖尿病患者がなんと50倍近くも増えたといわれています。血糖値を下げる安全装置が十二分ではない中で、日本人の食生活が戦後大きく変化した点が原因のひとつに挙げられます。

糖尿病にはまだわからないことがたくさんありますが、糖代謝の異常に関した様々な悪影響がおきていることが知られています。

糖代謝とは、血糖値を一定のレベルに保つためのメカニズムで、健康な状態では、血糖値が高いと血液中のグルコースは肝臓で吸収されてグリコーゲンになり、逆に血糖値が低いとグリコーゲンの分解で生成されたグルコースが血液中に放出されます。しかし、糖尿病になると、体内の細胞は血液中のグルコースをうまく利用できなくなります。その結果、血液中にグルコースがあふれ返っているにもかかわらず、体内の細胞はエネルギー不足に陥り、グルコースを作り出そうとして最終的に筋肉や脂肪まで分解されてしまい、血糖値がさらに上昇するのです。病状の進んだ糖尿病患者が食べても食べてもやせていくのはこうした悪循環に陥っているからと考えられています。

現代の医学でも糖尿病を完治することは難しいと言われています。糖尿病は、食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの様々な環境因子と遺伝的要因が複合的に組み合わさって発症すると考えられていますので、ふだんから健康な食生活を心がけることが最善の予防策であることは間違いないでしょう。
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Glycoforum
『Glycoforum』のコンテンツである「GlycoWord」では、糖質科学研究のキーワードをジャンル別に分類し、その分野における専門の研究者が解説しています。糖尿病およびインスリンの発症に関連するキーワードとして、シアリダーゼとインスリンシグナリングを紹介しています。
シアリダーゼとインスリンシグナリング

Science@Sugar
『砂糖を科学する会』による、砂糖の効能や暮らしの中での活用法を紹介したWebサイトです。砂糖健康学入門II 第1章 脳のエネルギー源では、脳のエネルギー源となるブドウ糖について解説しています。

京大病院病態栄養部 オンライン糖尿病教室
糖尿病の歴史や症状、その予防法について解説しています。

参考文献

新家龍、南浦能至、北畑寿美雄、大西正健:『食品成分シリーズ 糖質の科学』、朝倉書店(1996).


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