糖質科学の研究は、糖鎖生物学と糖鎖工学の2つの分野で展開されていますが、前者では特に疾患との関わりの解明が中心課題であり、後者では分析技術や製造技術が中心課題となっています。
糖鎖合成に関わる主要遺伝子のクローニング研究もほぼ一段落し、今後、それらの遺伝子と特定疾患との関連や、発生から老化に至る生命現象との全般的な関わりが課題となることでしょう。また、その研究を促進するため、有用なデータベースの構築や遺伝子リソース、糖鎖ライブラリーなどの完備、提供なども課題となっています。
具体的な活動例として、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進めている「糖鎖機能活用技術開発プロジェクト」があります。このプロジェクトは、産官学の協力の下で行われており、1)種々の疾患マーカーなどになりうる糖鎖の精製・特定、2)糖鎖のわずかな構造変化を検出する基盤技術の開発、3)糖鎖の機能検証、4)特定の糖鎖と特異的に相互作用する物質の開発──などを目標に掲げています。
また、このプロジェクト以外にも、糖鎖疾患マーカーを用いた画像診断技術の開発、糖鎖の特異性を活かして薬剤を疾患部位に輸送するドラッグデリバリーシステムの開発、再生医療への応用研究などが行われています。これまで基礎研究中心であった糖質科学が、いわゆる難病の診断や治療へ向けて、新しい段階に入ってきたと言えるでしょう。
そして、これからの糖質科学研究をさらに発展させ、医療への応用の可能性を広げるためでも、ゲノム研究やタンパク研究など他分野との研究連携が重要な課題となってきました。糖鎖のさまざまな機能は、生命をつかさどる他の分子との相互作用によってはじめて発現されます。糖質科学固有の基盤技術の進歩や知識の蓄積ももちろん重要ですが、領域を越えた研究連携が、糖質科学の医療や健康への貢献をより向上させると考えられます。
システム糖鎖生物学などの新たな視点に立った融合研究が、今後ますます必要となってくるでしょう。 |