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高い規則性を有する酸性ポリマー糖鎖の重合度決定

  ヒアルロン酸(HA)やN-アセチルノイラミン酸(NeuAc)ポリマーは広い分子量分布を有するものの、単純な構成単位糖からなる多糖である(Fig. 1.Structures of hyaluronic acid and N-acetylneuraminic acid polymers)。
Fig. 1.Structures of hyaluronic acid and N-acetylneuraminic acidpolymers
 HAはグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンからなる2糖を構成ユニットとする多糖であり、 NeuAcポリマーはNeuAcを構成ユニットとする多糖である。これらの多糖の分子量、言い換えれば重合度はその生理機能と密接な関係を持つことが知られている。例えば、FinneおよびMkelは10糖以上の大きさのα-2,8結合したNeuAcポリマーはgroup B meningococcal polysaccharideに対する抗体と反応性を示すと報告している(1)。またParkらは10から12糖以下のHAはhyaluronate lyaseに対して抵抗性を示すと報告している(2)。

 以上のような理由から、多糖類の機能を知る上でその分子量分布や重合度を知ることは極めて重要である。オリゴ糖や多糖の重合度や分子量分布を求める方法として、パルスアンペロメトリック検出器付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)やキャピラリー電気泳動法は有力な手段である。
 
 HPAECは強アルカリ条件下において糖の水酸基が解離することを利用して分離が達成される。単糖残基数として少なくとも100以上のNeuAcからなるNeuAcポリマー(分子量、約30,000)がHPAECを用いて分離されている。HPAECによる分析においては、分子量の小さなオリゴマーほど早く溶出される(3-5)。
 
 キャピラリー電気泳動もまたNeuAcポリマーやHAの高分解能分離に有力な手段となる。一例としてHAの分離例を示す(Fig. 2. )。
Fig. 2. Separation of hyaluronic acid using capillary electrophoresis
 100以上の2糖ユニットからなるHAが非常に高い分離能で分離されている。この分析では化学的に処理された溶融シリカ管(長さ、20cm)を用いてポリエチレングリコールを含む緩衝液中で分析が行われた。HA分子は緩衝液中のポリエチレングリコールにより形成される動的マトリックス内を移動するが、小分子はマトリックス中を容易に通過することができるのに対して、大きな分子はマトリックス中を抵抗を受けながら通過する。いわばSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動のキャピラリー電気泳動バージョンである。
 
 これらの分析手段により決定された多糖の分子量と分子量分布に関する情報は多糖の機能を知る上で重要な情報となることが期待される。
掛樋一晃 (近畿大学・薬学部)
References (1) Finne J, Mkel, PH : Cleavege of the polysialosyl units of brain glycoproteins by a bacteriophage endosialidase. Involvement of a long oligosaccharide segment in molecular interactions of polysialic acid. J. Biol. Chem. 260, 1265-1279, 1985
(2) Park Y, Cho S, Linhardt, RJ : Exploration of the action pattern of streptomyces hyaluronate lyase using high-resolution capillary electrophoresis. Biochim. Biophys. Acta, 1337, 217-226, 1997
(3) Zhang Y, Inoue, Y, Inoue S, Lee YC : Separation of Oligo/Polymers of 5-N-acetylneuraminic acid, 5-N-glycolylneuraminic acid, and 2-keto-3-deoxy-D-glycero-D-galacto-nononic acid by high-performance anion-exchange chromatography with pulse amperometric detector. Anal. Biochem. 250, 245 - 251,1997
(4) Stefansson M, Novotny MV : Modification of the electrophoretic mobility of neutral and charged polysaccharides. Anal. Chem. 66, 3466-3471, 1994
(5) Kakehi K, Kinoshita M, Oda Y : Capillary electrophoresis of N-acetylneuraminic acid: correlation between migration order reversa and biological functions. Anal. Chem. 71, 1592-1596 , 1999
1999年 9月 15日

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