2023年4月ヒューマングライコームプロジェクトが日本で始動した。本プロジェクトは、これまで3大生命鎖(核酸、タンパク質、糖鎖)の中で格段に少なかった糖鎖情報を他の生命鎖と同等のレベルまで引き上げる。そのために、ヒト糖鎖構造と生合成機構を網羅的に取得する。ヒト糖鎖構造は臨床情報や表現型とともに大規模な集団の個人別のデータとしてカタログ化される。これらの情報はナレッジベースTOHSAに格納され、世界のすべての研究者はこれまで避けてきた糖鎖を容易に日常の研究に取り入れられるようになる。こうしてューマングライコームプロジェクトは、科学者に新しい生命像を与え、生命科学の新しい時代を開く。 ...and more
キトサンは多くの天然賦存量を有するキチンから得られる多糖であり、高い生体適合性、生分解性を有するため、バイオマテリアルとしてよく利用されている。キトサンは酸性水溶液中ではポリカチオンとしてふるまう。本稿では、キトサンを構造材料として利用する一つのアプローチとして、キトサンとアニオン性多糖との混合により形成したポリイオンコンプレックスを成形することで得られる多糖複合フィルムについて概説する。多糖複合フィルムは物質担持能や吸湿性、保湿性を機能的特徴としてもつことから、薬物徐放担体や創傷被覆材などバイオマテリアルとして有用と期待される。。 ...and more
特定の腸内細菌はヒト腸管への適応戦略としてムチン分解酵素を産生する。近年、それら酵素群の解析が進み、ムチンの複雑な構造に対応した多様な酵素レパートリーが存在することが明らかとなってきた。またそれら酵素に関する情報は各種データベースにまとめられ、腸管内での分解・代謝経路の包括的な理解を試みる上で有用である。本稿ではこれまで明らかにされた腸内細菌由来のムチン分解関連酵素について焦点をあて、酵素の特徴から推定されるムチン分解経路について考察する。 ...and more