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はじめに 安静時の呼吸では、気道は1日当たり20,000 Lもの空気を肺胞へ送り込んでいる。清浄空気の基準においても、1日当たり1〜2×105
個までの細菌(約8,500細菌/m3空気)と、100 mgまでの不活性なほこりが吸い込まれる。この挑戦に対処するため、気道粘膜は種々のサイズと組成をもった空気中の物質に対し、洗練された防御を持たなければならない。
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正常な気道
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| Fig. 1 ヒト主気管支の断面 棒線=50μm | ||||
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空気を口から気体交換装置(肺胞)へ送るチューブ構造の気道は、粘液を分泌する杯細胞を含む繊毛を持つ偽層状の円柱上皮細胞により被われている。固有層は基底膜の下にあり、縦方向の弾性線維の束を有するゆるい結合組織を含んでいる。平滑筋層は固有層の外側にリングを形成している。粘膜下腺は固有層の下に見られる。直径2mm以上の気道においては、コラーゲン線維と軟骨から成るさらに外側の層が存在する。気道上皮細胞を覆う分泌物は、通常2層に分かれている:1つは主にO-リンク糖タンパク質またはムチンのような巨大分子を含む粘液層で、吸入されここに捕獲された粒子が保持される。もう1つは繊毛周囲の液層で、これは繊毛により打たれ、第一の粘液層を声門に向かって移動し、ここで飲み込まれる。 |
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ヒアルロン酸と肺 HAは肺実質の細胞外マトリックスの重要な成分として知られており、肺の発達において大きな役割を果たしている。HAの分子量の変化や、蓄積と/または除去は、炎症細胞が間質に流入したり、1,2
腫瘍が発生とか転移したり、ブレオマイシン誘導による間質性肺線維症と瘢痕形成3-6等に伴っておきている。
HAはまた気道の分泌物中にも見いだされていたが、これまでその役割についてはあまり研究されてこなかった。この“分泌物”中のHAが今回のレビューにおけるトピックスである。 |
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組織カリクレイン:ヒアルロン酸の結合と酵素活性の制御 我々は組織カリクレイン(以下TKと略す)と気道ラクトペルオキシダーゼ(LPOと略す)を研究してきた。これら2つは気道表面に分泌され、気道粘膜の防御に大変重要な酵素である。TKは粘膜下腺細胞で生産され、アレルギー性の気管支収縮に関係している。LPOは表面の上皮杯細胞と粘膜下腺細胞の両方で作られ、過酸化水素の掃除と細菌の除去に関係している。TKはセリンプロテアーゼであり、キニノーゲンを切り離して気道にリジル・ブラジキニンを遊離させる。ブラジキニンは気道の炎症における重要なメディエータであり、喘息の病態生理学に関係あるとされてきた。気道におけるTKの酵素活性の制御を研究してきて、我々は気管支TKがHAと会合し、それによってその酵素活性を阻害されることを発見した。17
TKがHAと結合することを示唆する最初の実験は、TKを気管支分泌液と一緒に陰イオン交換樹脂にかけたとき変わった溶出パターンを示したというものである。例えば膵臓や尿由来のような他のカリクレインは0.3〜0.5
M NaClで溶出するのに対し、気管支TKは1.8 M NaClで溶出した。このようなより強い結合は、TKが陰性電荷をもつ分子と会合していることを示唆した。気道分泌物中の候補分子としては、粘膜下腺から分泌されるGAGであるHA、ヘパラン硫酸(HS)およびコンドロイチン硫酸(CS)があった。Streptococcusヒアルロニダーゼでサンプルを分解すると、TKのクロマトグラフィーのパターンは“正常化”されたが、一方コンドロイチナーゼABC(pH
7.5で使用したが、このpHではほとんどヒアルロニダーゼ活性は見られない)またはヘパリナーゼではされなかった。気管支TKはHA-Sepharoseによるアフィニティークロマトグラフによっても精製できた。これらのデータは明らかにTKがHAと結合することを示した。 |
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TKは気道においてHAと結合し阻害されるので、HAの分解はTKを活性化し、結果としてキニンを生じさせる。気道においてHAの分解は、内在性の細胞源からの、または感染中には細菌源からのヒアルロニダーゼにより、または上皮細胞によりまたは炎症中は気道へリクルートされる食細胞から生じる、反応性の酸素と窒素種により行われる。HAを分解できる反応性酸素と窒素の分子種とともに、それらの比較能力が徹底的に研究された。18-21
アレルギー性気管支収縮は、気道において反応性の酸素と窒素種の増加を伴っている。従って、その結果としてのHA分解の増加は、少なくとも部分的には、アレルギー反応の間のTKの活性化とキニンの産生の原因となろう。この仮説を支持して、我々は喘息の動物モデルで、エアゾール化したHAがin
vivoで、TK伝達性の気管支収縮を防止することを示した。22
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ヒアルロン酸は分泌タンパク質のアンカーとして働き、繊毛運動による除去を防いでいる 我々は気道におけるTKの局在を明らかにするために、免疫組織化学を用いた。そしてこれが予想通り粘膜下腺細胞にあるのを見いだしたが、驚いたことに気道上皮細胞の繊毛の縁に沿っても存在することを発見した(Fig.
4)。これに加えて、粘膜下腺細胞を含むヒツジ気道上皮細胞の、初期培養におけるTKの局在部位を調べたところ、繊毛に沿って特異的な染色が見られた。気道に分泌される他の酵素であるラクトペルオキシダーゼ(LPO)もまた繊毛の縁に局在していた。上皮細胞上にはこれらの酵素に対する既知のレセプターはない。しかしながらHAは同じ位置に存在しており(Fig.
4)、従って我々はHAが、気道上皮細胞の頂膜でこれらの酵素を固定することに関与しているかどうか知りたかった。ヒアルロニダーゼ処理により、繊毛先端におけるHA,LPOおよびTKの染色は除去された(pH
7.0におけるコンドロイチナーゼABC、またはヘパリナーゼでは除去されなかった)が、アルシアンブルーとPAS陽性物質がそこに残っていることより、上皮細胞の頂膜からすべての複合糖質が除かれたのではない(Fig.
4)。我々はHAがTKと特異的に相互作用することを知っているが、LPOアミノ酸シーケンスにも特異的HA結合サイトは見られない。LPOは塩基性のpIをもっており、従ってHAとイオン的相互作用で結合できる。しかしHAは、気道上に存在するグリコサミノグリカン(GAG)の中でもっとも高い電荷密度をもってはいないので、LPOはHAと会合している他のGAGのイオン的相互作用で結合している可能性もある。我々の実験ではこれら2つの可能性を区別できなかった。以上を要約するとこれらのデータは、生合成されてきたか、または細胞膜に結合したHAが、気道の上皮細胞表面でTKとLPOをつなぎ留めることを示している。
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我々はHAと気道上皮細胞の頂膜極との間のみならず、TKとの間の相互作用も視覚化することと、その生物学的関連性をテストするため追加のアプローチを用いた。安楽死させたヒツジから新たに単離した気管にex vivo の条件下で、蛍光ラベルしたタンパク質を管腔面に添加した。これらの標品の繊毛は調和した運動を維持して、気管支分泌液を近位端に移送するので、in vivoでのように蛍光標識の移動を見ることができる。Fig. 5で見られるように、フルオレセインで標識したTKはスポットした場所で動かないが、一方ローダミンで標識したBSAは繊毛運動により移動した。この移動の結果、当初の混合物でのオレンジ蛍光色は緑(TK)と赤(アルブミン)のバンドにきれいに分かれた。これはBSAが気管の近位端に自由に動くのに対し、TKは固定化されたことを示している。ヒアルロニダーゼで前処理すると、フルオレセインとローダミンの標識は一緒に近位端へ移動したことから、TKはHAにより固定化されたことが分かる。
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RHAMM(ヒアルロン酸レセプターの1種)は上皮細胞の頂膜縁に発現される HAは気道上皮細胞表面にTKを保持しているので、我々はHA結合レセプターも発現されているかどうかを調べた。HAレセプターとして知られているものとしてはCD44,ICAMそれにCD168(またはRHAMM:
receptor for hyaluronic acid mediated
motilityともいう)が含まれる。以前の報告によるとCD44は上皮細胞の側底膜側に見られるが、正常な繊毛化された気道上皮細胞の頂膜にはなかった。25
それに加えて、精液中のHAは、RHAMMと相互作用することにより精子の運動に必須であることが分かった。b
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ヒアルロン酸は気道上皮細胞における繊毛運動振動周波数を増加させる RHAMMに結合したHAが精子の動きを促進することにより、我々はin vitroにおける繊毛運動振動周波数(CBF:ciliary
beat frequency)に対するHAの効果についても、デジタルビデオ顕微鏡を用いて研究した。内在性のHAをヒアルロニダーゼで除去した後、培養繊毛化上皮細胞を、50-100μg/mlの平均分子量約100
kDa HAにさらすと、振動周波数(CBF)は、ベースラインから約15%増加した。26この増加はHAの製造メーカーによる差の影響は受けなかった(Worthingtonと生化学工業からのHAはどちらも等しく効果があった)。しかしながらヒアルロニダーゼで分解(18
h)したHAは、CBFに効果を示さなかった。27これらの発見は森本ら28による以前の研究とは対照的であった。すなわち彼らの実験では、鼻細胞において高分子量HA(1,000
kDa以上)はCBFに効果がなかった。しかしながら多くの研究から現在では、いろいろな細胞へのシグナル伝達において、低分子量のHAは、高分子量のものと比較してより顕著な生物活性を有することが示されている。従ってこれらの観察結果は必ずしも驚くことではなく、全く矛盾していない。実際、正常に気道に分泌されるHAは、その平均分子量がかなり高い(数百kDa)ので、CBFに対し効果を示さないと推測できる。しかしながらもしHAが気道で低分子化されると(例えば反応性の酸素または窒素類により)、CBFは促進される。このことは気道から有害な刺激物を除去するという、固有の防御反応とよく適合するだろう。
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討論と結語 少なくとも一部の気道HAは、上皮細胞の頂膜部に固定され、そこでHAは分泌タンパク質と結合し保持できるという事実は、上皮細胞表面に分泌された酵素は機械的作用により速やかに除去されるという、一般的概念を否定するものである。他の粘膜分泌液もHAと多分他のGAGを含むので、気道におけるこれらの観察は、分泌液に浸され、機械的プロセスで除去される他の上皮にもあてはまるかも知れない。 |
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| December. 16, 2002/ Copyright (c) Glycoforum. All Rights Reserved | ||||
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