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| はじめに 前立腺ガンは男性におけるガンによる死亡の主要原因の一つであり、死亡率でも肺および大腸・直腸ガンに次いで高い1。ほとんどの前立腺ガンは診断時において前立腺内に留まっている。他の悪性腫瘍におけるように、前立腺ガンの進行は侵襲性の増大、血管新生及び最終的には遠隔組織への腫瘍の転移を伴う。局部に限定された前立腺ガンは当初アンドロゲン遮断療法により、ある程度効果がみられる。しかしながら多くの場合腫瘍細胞はアンドロゲン依存性を失って再び成長し始め、侵襲性を増加させる。遠隔転移は骨とリンパ節に最も高率に起こり、いくらかの内臓転移も伴う。骨転移は前立腺ガン患者における臨床上の主要な悪化原因であり、ガンが進行した患者では強い骨の痛みを引き起こし、QOLを低下させる。腫瘍の成長、血管新生および転移に影響する要因を明確にすることは、原発性腫瘍の診断を容易にし、新しいガン治療の発展へと導くことになるだろう。 |
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| ヒアルロン酸:バックグランドと発生における役割 |
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| ヒアルロン酸の合成 HAはほ乳動物において、HAS1、HAS2およびHAS3の3つのヒアルロン酸合成酵素ファミリーにより合成される7-9。アミノ酸レベルでは50
- 70%相同であるが、ヒトの3つのアイソザイムの遺伝子は3つの別々の染色体に位置している:HAS1(19q13.3-q13.4)、HAS2(8q24.12)およびHAS3(16q22.1)。2次構造予測とホモロジーモデルから、これらの膜タンパク質は6つの膜貫通ドメインと7つ目の膜にくっついたドメインから成っていることが示唆されたa,7。全分子量の約半分の大きさの細胞内ループに酵素活性サイトと基質結合ドメインが含まれる。3つの全てのアイソザイムは同じ反応を触媒する。それはそれぞれのUDPエステル化糖前駆体からグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンを交互に連続して付加し、繰り返し2糖を形成する。ポリマー化は成長する糖鎖の分泌を同時に進行するので、その最終サイズは細胞の大きさに制限を受けない。新しく合成されたHAの分子量は平均1
x 105 - 1 x 107 Dalton の範囲である。 |
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| ヒアルロン酸の分解 ヒアルロニダーゼはHA合成酵素により産出された大きなHAポリマーの分解を担う。ヒアルロニダーゼで生じたHAの断片は、元の高分子量ポリマーと異なる生物学的性質を有する。ヒアルロニダーゼはHAの細胞内hの取り込みと血管新生を促進する小さなHAオリゴ糖の生成に必要である。正常な発生と組織の機能においては、ヒアルロニダーゼ発現の増加は通常分化した細胞に伴っており、従ってこれらの細胞は速く分裂していない。ヒアルロニダーゼファミリーには5種の酵素があり、それらはアミノ酸配列と活性の性質において種々異なっている。これらの酵素をコードする遺伝子の位置は、染色体の3P21.3と7q31.3の2つのグループに極めて接近して存在しているb。ファミリーのメンバーの発現は、組織特異性と細胞内局在性のどちらにおいても異なっている。酵素の翻訳後のプロセッシングもまた組織特異的に観察される。血漿中の主要なヒアルロニダーゼであるHyal1は全体の見かけの分子量は57kDで、そのうち8kDはコアタンパクのグリコシル化によるものである。これとは対照的に尿中から単離されたHyal1はそのカルボキシル末端のタンパク分解によって、より小さな分子量を示すb。ヒアルロニダーゼのプロセッシングまたは発現の仕方における組織特異的違いの重要性は完全に分かっていないが、尿中のHyal1は血漿Hyal1より高い比活性を有する。 |
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| ヒアルロン酸マトリックス生成 HAは高度に陰性で、全ての2糖単位に1つずつ陰性荷電をもつ。高分子の糖として、HAはまた非常に親水性を示す。各HA分子間の静電気的反発と分子の高い水和性が相まってHA水溶液に粘性の高いゲル様の性質を与えている。組織内における高いHA含量の生理的性質としては、組織容積を増大させ、ゆるいマトリックスを維持するようになる10。これは関節や生命に必須の器官のような組織のクッションとして望ましい性質であり、物理的損傷に対する防御として、分泌された高分子量HAに依存する。組織の水和維持に加えて、HAマトリックスは栄養物や低分子活性物質の拡散を調節できる。たとえば成長因子とサイトカインはそのような拡散が制限されることで局部的に濃縮されるかも知れない。従って組織における高いHA含量はまた、細胞外刺激への組織の応答を制御するかも知れない。 |
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| ヒアルロン酸マトリックスとガンの進展 腫瘍細胞はHAリッチ細胞外マトリックスが高度にクロスリンクした線維性タンパク質のネットワークを欠き、廻りの組織により容易に侵入できる性質を利用するかも知れない4。HAによって水和された組織では、腫瘍細胞が移動し侵入するかも知れない物理的な空間が生じる。腫瘍に伴っている間質内のHAリッチマトリックスはまた新しく形成された血管により侵入される.12,13。腫瘍によって分泌された刺激物に応答して形成されたり、増大したりするかも知れないこれらのマトリックスは、成長する腫瘍に血管新生を増強することにより腫瘍細胞の生存と成長の助けとなる環境を提供すると考えられる。原発性腫瘍におけるHA含量の変化は、ガンと腫瘍に伴う間質の間の複雑な相互作用に起因する。ガンにより産出された成長因子とサイトカインは、間質中の繊維芽細胞を刺激して、HAとそれに伴うHA結合マトリックス成分の産生を増加させ、拡大する腫瘍の近傍HAリッチマトリックスを形成させるようになるかも知れない。蓄積するHAはガンの成長、生存および侵入を促進し、HA断片は血管形成に寄与しているかも知れない。腫瘍が進行するにつれ、ガン細胞はそれぞれの細胞周辺HAリッチマトリックスの合成と保持を行うようになり、間質繊維芽細胞によるHAの産生にあまり依存しなくなるかも知れない。ガンによるHAの産生は従ってオートクライン的に作用して、腫瘍の成長と転移を促進するのかも知れない。 |
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| ヒアルロン酸:前立腺ガンにおける増加 HAは細胞増殖や移動のような正常な発生プロセスの制御に関与しているので、その過剰生産は不適切な細胞分裂や移動によって特徴づけられる病態としばしば関連する。重要なことは、大腸、乳房、膀胱および前立腺の各ガン患者で血中HAレベルが上昇し、また原発性腫瘍内でHA沈着が増加していることである。腫瘍の種類によって、これらのHAの沈着は、ガンまたは腫瘍に伴っている間質細胞によって形成される。これらの観察から、ヒトにおけるHAの蓄積と腫瘍の進行の間に重要な関連性がある可能性が強い。 |
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| ヒアルロン酸マトリックス結合タンパク質 一つの特異的HA結合プロテオグリカンであるバーシカンは、HAとHyal1のように、病理学的進行度に相関した仕方で、原発前立腺ガン組織に蓄積する18。腫瘍におけるHAの蓄積を増加させる因子は完全には解明されていないが、それは腫瘍の進行度に相関する特異的なHASアイソザイムの増加と、変化した特異的なHA結合タンパク質レベルとに関連するらしい。腫瘍に伴う間質でのバーシカン量増加は、ガンに由来したTGF-β1刺激で腫瘍の間質領域内繊維芽細胞によって一部は産生される18。原発性ガンのHAリッチ細胞外マトリックスの変動する組成を示す更なる研究は、これらのマトリックスが安定化または分解されて、前立腺ガンの進行を促進するメカニズムを明確にするために重要であろう。 |
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| 細胞表面ヒアルロン酸レセプター 前立腺ガンの進行におけるHAリッチマトリックスの細胞表面への保持と生物学的機能もまたHAの細胞表面のHAレセプターおよび細胞内HA結合タンパク質への結合に依存している。CD44とRHAMM(receptor
for hyaluronan-mediated motility)の2つは、HAに対する細胞表面レセプターとして最もよく研究されており、どちらも腫瘍の浸潤と転移の生物学に関係していると推測されているd,19。これら2つの細胞表面レセプターのリガンド結合性およびシグナル伝達機能の複雑さは活発に討論されてきた10,19。これらレセプターに関する多くの研究を詳しく紹介することは、このレビューの範囲を超えるが、前立腺ガンに直接関連すると推定される両者におけるいくつかの重要な特徴がある。 |
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| ヒアルロン酸の産生と前立腺腫瘍細胞の接着と成長 HA合成酵素によるHAの過剰産生と腫瘍細胞の浸潤または転移が関係する、という多くのモデルがこれまで使われてきた(表1に要約)。たとえば、HT1080ヒト繊維肉腫細胞において、HAS2の過剰発現で増加したHAは、in
vivoで大きな腫瘍塊を生成し、またソフトアガー中での成長を促進した34。TSU前立腺細胞株でのHAS3過剰発現は腫瘍の成長を加速した35。HA合成能の低い乳ガン細胞を選択すると、HA合成能の高い親の細胞株に比較して、肺への転移巣形成が大きく減少した。転移に対するこの抑制効果はHAS1のトランスフェクションによりHA合成を回復させることにより完全に元に戻った36。我々自身の最近の結果でも、転移性前立腺ガン細胞のHAS活性を阻害すると骨髄内皮細胞への接着が抑制されるとともに、免疫不全マウスに注入した時には、腫瘍塊形成も抑えることが証明された。(表1及び
詳細は後述) |
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| 我々の研究室における研究でヒト前立腺腫瘍細胞株を用いて前立腺ガンの進行における重要な因子を同定した37-39。我々の当初の実験は、前立腺腫瘍細胞は、これの最も高頻度に転移する部位は骨であるが、この細胞表面レセプターが分布しているゆえに骨組織に優先的に転移巣形成できると言う仮説を検証することを目指した。我々は、下層に培養ヒト骨髄内皮細胞を使い、それぞれ異なった転移能を有する前立腺細胞株を用いてin vitroの単純な細胞接着実験を行った。我々は、非転移性LNCaP細胞は骨髄内皮細胞にあまり接着しないことを見つけた。対照的に転移性のPC3細胞、それにPC3の変異種で転移能が更に高いPC3M-LN4は、骨髄微少血管由来内皮細胞に迅速で定量的に接着したが、たとえばヒト臍帯静脈内皮細胞のような太い血管由来のものには接着しなかった(図 1)。さらに、ヒアルロニダーゼ分解に感受性があることと、外部から添加したHAが競合的に働くことから、この迅速な接着には腫瘍細胞表面のHAが必要であることが分かった37。骨髄内皮細胞への接着は前立腺腫瘍細胞株の転移能と概ね相関することから、接着表現型は転移性前立腺ガン細胞の特徴の一つらしいことが示唆された。 | ||||
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HA合成と前立腺腫瘍細胞株による細胞表面への保持との比較から、HAの高い産生と転移能の相関性が証明された37。我々は正常前立腺と比較した前立腺腫瘍細胞株におけるHA合成酵素の発現レベルを分析し比較するために半定量的RT-PCRを用いた。HAS1は検出できなかったが、HAS2とHAS3が劇的に過剰発現されていた。対照的に、非転移性LNCaP細胞は、HAS2を発現せず、HAS3の発現もわずかであり、これらの細胞表面にHAがなく、骨髄内皮細胞にあまり接着しないことと矛盾しない。同様に正常前立腺においてHAS2とHAS3の発現は通常非常に低く、これは正常なヒト前立腺組織切片で検出されるHAレベルは低いという組織学的報告と一致する16。 |
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| 図 2. PC3M-LN4細胞におけるHA合成酵素の阻害は細胞表面へのHA保持を減少させる。細胞表面のHAは粒子排除法により検出された。PC3M-LN4のトランスフェクトしないもの、コントロールベクターでトランスフェクトしたもの、HAS2、およびHAS3アンチセンスでトランスフェクトしたもの、またはHAS2/HAS3ダブルアンチセンスでトランスフェクトした各細胞を、アグリカン(2 mg/ml)と90分インキュベートした。アグリカン溶液を除き 1×108 個の固定したヒツジ赤血球を含む、フェノールレッドを含まないMEMで置き換えた。15分インキュベート後、細胞を400倍で光学顕微鏡により観察した。PC3M-LN4のトランスフェクトしない、またはコントロールの細胞を取りまくHAマトリックスでは赤血球は排除され鮮明なハローとして見られる。これらマトリックスがHAを含むことは、アグリカンを添加する前にヒアルロニダーゼ消化することにより確かめており、こうすると鮮明なゾーンはもはや見られない。(枠内パネル) |
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| 図 3. 転移性前立腺腫瘍細胞でHA合成酵素の発現を阻害すると、骨髄内皮細胞との接着が阻害される。コントロールベクター(GFP)、HAS2アンチセンス(HAS2as) またはHAS3アンチセンス(HAS3as)で安定的にトランスフェクトしたPC3M-LN4細胞の遊離細胞サスペンションをカルセインでラベルした。コントロール培地または16 U/mlのストレプトミセスヒアルロニダーゼで処理した培地を、コンフルエントな骨髄内皮細胞単層培養を含むウェルに添加した。10分後、非接着性または弱く接着した前立腺腫瘍細胞をウェルを洗うことにより除去し、次に接着した細胞を溶解し、蛍光により定量した。平均の接着細胞は各条件とも加えた総細胞のパーセントとして計算し、±SEMで表わした。 |
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| 転移性および原発性の前立腺腫瘍の成長では、高いレベルのHA合成が付随している。それゆえ我々は、腫瘍細胞成長におけるHAの役割を、免疫不全マウスにHASアンチセンスで阻害したPC3M-LN4細胞を皮下注入することにより評価した38。その結果、ベクターコントロールまたはトランスフェクトしない細胞株と比較して、一方のHASまたは両方のHASを同時にアンチセンス処理したものは腫瘍の成長が75 - 80%減少した(図4)。in vitroでのHASアンチセンス発現細胞の成長は、HAの合成と保持の減少に相関したように抑制されたが39、この抑制効果は、成長しているケラチノサイト培養でのHASアンチセンス発現したものでも観察されたように、細胞をより長期間培養すると減少した40。腫瘍内の増殖性細胞のパーセントは変わらないことから、抑制された腫瘍サイズは、成長する性質の変化だけでは完全に説明できない。 |
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| 図 4. HA合成酵素の発現のアンチセンスによる阻害はin vivoでの腫瘍成長を阻害する。転移性PC3M-LN4細胞、ベクターのみ(GFP)、HAS2アンチセンス(HAS2as) 、HAS3アンチセンス(HAS3as)または両方のアンチセンスベクター(HAS2/3as)の発現をするものを選別した。安定なトランスフェクタントの遊離細胞サスペンジョンを免疫不全マウスの皮下へ注入した。3週間後、各条件における10匹の動物からの腫瘍を集め重量測定をした。データは平均重量 ±SEMで表した。 |
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コントロールとHAS欠損腫瘍細胞からの腫瘍中血管系の評価から、腫瘍の成長動態が抑制されていることに対し追加される説明は、血管形成の減少であることが示唆された38。腫瘍の血管新生は、細胞表面血管内皮細胞マーカーである抗CD31抗体による染色で計測された(図5)。PC3M-LN4細胞によるHA産生の減少は、腫瘍血管系を70 - 90%抑制した。腫瘍切片における血管密度が減少したことから、HA合成の阻害が腫瘍により産生された血管新生因子の発現または機能を変えたようにみえる。これらの結果は、完全長HAS3をTSU前立腺ガン細胞株にトランスフェクションすると、腫瘍成長と血管新生が導かれたという以前の研究を補足するものである35。 |
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| 図 5.
HA合成酵素発現をアンチセンスで阻害すると腫瘍により誘導された血管新生を阻害する。免疫不全マウスにおいて皮下で成長した腫瘍を集め、凍結して切片とした。腫瘍に伴った血管は、CD31-フィコエリスリン結合した抗体で切片を染色した後、蛍光顕微鏡で観察した。 A) GFPコントロールのトランスフェクタントまたはHAS2/3asから得た代表的切片を示した。 B) 結合抗体で染色した5つのランダムな切片のデジタル写真をとり、イメージをAdobe Photoshopで処理した。各トランスフェクタントの平均画素密度を測定し、観察された値は非トランスフェクトPC3M-LN4細胞を含む腫瘍切片での測定結果を用い標準化した。 |
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| 興味深いことに、PC3M-LN4細胞におけるHASアンチセンス発現の成長(図6)と血管新生(示していないが)に対する阻害効果は、ヒアルロン酸(平均810 kDa)の注入液への添加により完全に回復したことである38。この観察はHAによる腫瘍成長の促進は、腫瘍注入に続く初期での活性化を通じて起こり、浸潤性の高い乳ガン細胞株のヒアルロニダーゼ処理が腫瘍の成長を劇的に縮小させたというShusterらの結果を補足するものである41。HAにより活性化される初期事象としては、アポトーシスからの保護による腫瘍細胞生存の促進、または腫瘍を取り囲む正常組織での血管新生の促進を考えることもできる。どの様なメカニズムであろうとも、成長する腫瘍は代替供給源由来のHAを利用することができる。この観察は、原発性ヒト前立腺ガン間質で検出されるHAの増加は、腫瘍細胞または間質細胞のどちらに由来するものであっても、腫瘍成長、局所への浸潤、血管新生および転移に影響することを示唆している。 |
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| 前立腺腫瘍ヒアルロン酸含量の制御 ヒト前立腺ガンの進行は、間質マトリックス中のHAとヒアルロニダーゼ含量の大幅な増加を伴っている(図 7に要約)。マトリックス中のHA含量は、HA合成酵素、ヒアルロニダーゼおよびHA結合タンパク質の複雑な相互作用によって調節されている。しかしながら、HA代謝酵素と結合タンパク質の発現と活性を制御するメカニズムは余り理解されていない。前立腺ガンにおけるHA合成酵素の遺伝的増幅についていくつかの証拠はあるが、HAの合成と分解の制御において、前立腺ガンのミクロ環境内の因子が確かに重要な考察の対象である。 |
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| 前立腺腫瘍進行を伴う遺伝的変異は、今やっと同定され始めたところである。このような変化は腫瘍内のHA合成レベルを変化させるのかも知れない。染色体8q.24部分の過剰発現は前立腺腫瘍の進行に見られる42。この増幅された領域に存在する遺伝子座は、部分的に解析され、HAS2のコーディングシークエンスを含むことが見つかった。前立腺腫瘍の細胞株の分析から、HAS2遺伝子座の増幅と、HAS2の高い発現の間に相関関係が示された。前立腺腫瘍細胞内での遺伝的過剰発現は、より進行した転移性腫瘍細胞において、HAS酵素レベルが増加することによるという重要なメカニズムを示しているのかも知れない。 |
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| まとめと将来の研究 腫瘍に結合したHAの上昇により腫瘍の進行が促進されるメカニズムを理解することは、前立腺腫瘍研究の重要な領域である。腫瘍間質内HAの上昇と、患者における好ましくない予後の間には、はっきりした関連がある。さらにわれわれおよび他のグループの結果によると、最も進行した腫瘍は自律的にHA合成酵素を発現し、原発性腫瘍またはその転移領域における自分自身の微少環境をよい状態にして、成長、生存および血管新生を促進するのかも知れない。腫瘍細胞表面におけるHAの存在は、骨髄での腫瘍細胞の捕捉を促進するらしく、結果として組織への進入と成長の維持のためのシグナルを伝達するのかも知れない。これは進行した前立腺がん患者における病態の臨床的に重要な特徴であり、治療の標的として用いられる可能性がある。 |
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