GALECTIN
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アネキシンファミリーとレクチン活性

  アネキシンはカルシウムおよびリン脂質に結合するタンパク質ファミリーで、現在までに菌類を除くすべての真核細胞の植物および動物から20種類以上が見い出されている。アネキシンは分子量30〜40kDa(アネキシンVI のみ約66kDa)のタンパク質で、構造上大きな特徴がある。アミノ末端側ドメインはそれぞれのアネキシンに固有の配列(11〜196残基)で、一方それに続くカルボキシ末端側のドメインはアネキシン間でよく保存されている約70アミノ酸残基からなるαヘリックスが4回(アネキシンVI のみ8回)繰り返した構造である。カルシウム結合部位やリン脂質結合部位はカルボキシ末端側のドメイン上にある。


 ほとんどすべての種類の細胞がアネキシンファミリーのタンパク質を少なくとも1つは発現しており、同時に複数のアネキシンを発現している細胞も多く、発現量も比較的多い。細胞はこんなにたくさん何のためにアネキシンを作っているのか? これは一つにはアネキシンの機能が一義的ではなく、細胞の内外で時と場合に応じて多様なリガンドと相互作用しなければならないからかも知れない。


 アネキシンはリン脂質の中でもホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールに結合する。これらのリン脂質は細胞膜の内側に多く分布しており、正常な細胞表面にはほとんどない。一方、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンは細胞表面に多いが、これらとはアネキシンは結合しない。このことは細胞内アネキシンについて提唱されている主にリン脂質と結合することで発揮される役割ーホスホリパーゼA2 の活性を基質となるリン脂質を捕捉することにより抑制したり、小胞輸送、エンドサイトーシス、エキソサイトーシスなどに関与して機能することとよく合っている。アネキシンが細胞内でその局在部位を変えることはよく観察されていて(細胞質から細胞膜)、これは小胞輸送などのダイナミックな動きに対応していることを想像させる。
図の説明
細胞外スペースにおけるアネキシンへの推定リガンドの模式図
アネキシンIIは組織プラスミノーゲンアクティベーターとテネイシン結合する。コラーゲン・レセプターとして単離されたアンコリンCIIはアネキシンVと同じものと判明。アンエキシンIV、V、VIは糖との結合活性を示すが、その正確な糖鎖リガンドは、生理的関連性とともに今後の解明が待たれる。
 さらにアネキシンは細胞内から細胞外へ未同定の機構を介して膜を通過する。アネキシンは疎水性のシグナルペプチドを持たないが、いくつかの細胞で実際に分泌されたり細胞表面に現われることが知られている。細胞の外に出たアネキシンは細胞外タンパク質のレセプターとして機能する。アネキシンV はコラーゲンの、アネキシンII はテネイシンや組織プラスミノーゲンアクティベーターと結合することが示されている。さらには細胞外ではアネキシンは複合糖鎖とも相互作用することが明らかになってきた。最初にアネキシンIV がカルシウムイオン存在下でシアロ糖タンパク質あるいはグリコサミノグリカン鎖に結合するレクチンであることが明らかになったが、その後アネキシンV やVI などいくつかのアネキシンが同様なレクチン活性をもつことがわかってきた。アネキシンIV の主要な発現部位である腎臓や膵臓での局在やin vitroでの結合試験の結果からはアネキシンIVがGPI-アンカー型の糖タンパク質やプロテオグリカンと相互作用してアピカル側にソーティングされる輸送小胞の形成に関与することが示唆される。またアネキシンV には神経栄養活性が見いだされたり、いくつかのアネキシンの細胞接着(あるいは接着阻止)活性が注目されている。今後の研究にアネキシンの認識する内在性複合糖質リガンドの特定と糖認識機構の解明が待たれる。
小島 京子(お茶の水女子大学・理学部)
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(2) Characterization of carbohydrate-binding protein p33/41. -relation with annexin IV, molecular basis of the doublet forms (p33 and p41), and modulation of the carbohydrate binding activity by phospholipids. K. Kojima, K. Yamamoto, T. Irimura, T. Osawa, H. Ogawa, and I. Matsumoto. J. Biol. Chem., 271, 7679-7685, 1996.
(3) Characterization of the heparin binding properties of annexin II tetramer. Kassam, G., Manro, A., Braat, C. E., Louie, P., Fitzpatrick, S. L., and Waisman,D. M. J. Biol. Chem., 272, 15093-15100, 1997.
1997年 12月 15日

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