GALECTIN
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C−型レクチンの多様性

  結合のためにカルシウムイオンが必要な一群の動物レクチンをC−型レクチンと呼ぶ。C−型レクチンの糖結合活性は、構造的に良く保存された糖認識ドメイン (carbohydrate recognition domain; CRD) によって担われている(1)。カルシウムは、糖結合部位で糖鎖との結合に直接関与する(2)と共に、立体構造の維持を通じても糖認識活性に重要な役割を果たしている(3)。C−型レクチンのCRDは、様々な分子構造中に見いだされ(図)、多様な生物機能における糖鎖認識の重要性を反映すると考えられる。大別すると、細胞外に分泌される可溶性のC−型レクチンと、細胞間の分子認識・細胞接着・細胞内への物質取り込み等の生物機能を担う膜貫通型C−型レクチンがある。
Figure
 可溶性のものとしてはプロテオグリカンのコア(versican, aggrecan, neurocan, brevican) があげられ、レクチカン(Lecticans) という名称が提唱されている。この分子群では、カルボキシル末端近くにC−型レクチンのCRDがあり、興味深いことに、2つの上皮増殖因子(EGF)と相同性のあるドメインと、補体制御タンパクと相同性のあるドメインに挾まれた形で存在する。


 第2の可溶性のものとしては、コレクチン(Collectins)があげられ、補体の活性化等を通じた生体防御機構への参加が想定される。血清タンパクのマンノース結合タンパク(MBP)や肺のサーファクタントのSP-A, SP-Dやウシ血清タンパクのコングルチニンが含まれる。分子的な特徴としては、カルボキシル末端にCRDがあり、アミノ末端側がコラーゲン様ドメインからなる。コラーゲン型3重らせんによってできる3量体を単位とし、さらにそれらが多量体を形成する。(参照:生体防御因子コレクチン)


 細胞膜結合型C−型レクチンとしては、第1にセレクチン(selectins)があげられる。セレクチンは、白血球が血管外に浸潤するために重要なステップである白血球と血管内皮細胞との接着に関与する。白血球側のセレクチンとしてL-セレクチンが、血管内皮細胞側のものとしてE-セレクチンおよびP-セレクチンが知られている。(参照:接着分子レクチン)


 第2の膜貫通型のものとしては、細胞外のカルボキシル末端にCRDがあり、1個の膜貫通ドメインをもち細胞質側がアミノ末端となるいわゆるタイプIIの膜貫通型タンパク質があり、便宜上タイプII受容体と呼ぶ。肝実質細胞のアシアロ糖タンパク質受容体やマクロファージレクチン、ナチュラルキラー細胞の受容体群、低親和性IgE受容体(CD23) が典型的な例である。クラスリンコートをもつ小胞に結合するコンセンサス配列を細胞質内ドメインに持ち、エンドサイトーシスによる物質の細胞内取り込み径路において受容体(例えば、アシアロ糖タンパク質受容体)として関与しうる。また、細胞同士の認識とそれに基づいたシグナル伝達を起こすもの(例えば、ナチュラルキラー細胞受容体のNKR-P1)も知られている。分子種によっては、2量体、3量体、6量体を形成し、糖鎖リガンドと多価の相互作用を起こす。


 第3の膜貫通型レクチンとしては、複数のCRDを直列型に持つタイプIの膜貫通型タンパク質があげられる。細胞外にあるアミノ末端側からシステインに富むドメイン、フィブロネクチンタイプIIドメイン、複数の連続した配置のCRD、膜貫通ドメイン、細胞質内ドメインから構成される。マクロファージ等細胞表面のマンノース受容体や、主要な抗原提示細胞の一つである樹状細胞表面のDEC-205があげられ、細胞内への物質の取り込みに関与する。分子的な特徴としては、直列に配置された複数のCRDが糖鎖結合活性を持っており、多量体形成と同等な効果、すなわち糖鎖リガンドとの多価の結合を可能にしている。
今井 康之(静岡県立大学・薬学部・微生物学教室)
References(1) Drickamer, K. J. Biol. Chem. 263, 9557-9560, 1988
(2) Weis, W I et al. Nature 360, 127-134, 1992
(3) Kimura, T et al. J. Biol. Chem. 270, 16056-16062, 1995
1998年 3月 15日

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