Glycoprotein
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カロースシンドローム

 セルロース-カロースシンドローム
植物細胞膜画分を用いてUDP-グルコースからセルロース(1,4-β-グルカン)の合成を試みると、カロース(1,3-β-グルカン)が顕著に生成される。セルロースは地球上で最も多いバイオポリマーとして植物によって生産されているにもかかわらず、細胞膜からの顕著なカロースの合成が症候である。これは、セルロースの生合成が試みられて以来、多くの植物研究者を悩ませてきたシンドロームである。この合成酵素活性は細胞膜のマーカーエンザイムとして用いられ、以前まではセルロース合成酵素が誤ってカロースを合成すると考えられていた。実際、カロース合成酵素は繊維の端に20から30 nmの直径のドーナッツ型の複合体を形成し、これは、セルロース合成酵素のターミナルコンプレックスと良く似ている(1)。しかしながら、最近セルロース合成反応系を最適化させることにより、セルロース生合成はカロースの合成とは異なることが証明された。また、セルロース合成酵素の遺伝子(CesA)がカロース合成酵素の遺伝子(Csl)と異なるものであることも認められた。

微小管-カロースシンドローム
プロトプラストをガラス板の上に置いて固定した後、低張液に漬けると細胞はバーストしてガラス板上に細胞膜シートが得られる。これをUDP-グルコースとともにインキュベイトすると膜とガラス板の間にカロースが合成される。カロース繊維は、表層微小管に添って合成されることが示された(2)。症状は、繊維と微小管の配向の一致とプロピザマイドで微小管の重合を破壊すると繊維の配向が消失することである。これは、細胞膜上でカロース合成を観察する場合のシンドロームとなる。カロース合成酵素は、微小管またはその結合タンパク質に直接的または間接的に結合しているのかもしれない。このシンドロームは、セルロースミクロフィブリルが表層微小管の配向にそって合成されるシンドロームと関連している。

傷害応答-カロースシンドローム
主な症状は、植物細胞への生理的ストレス、化学的または物理的傷害、病原菌感染によって誘導されるカロースの生成である。カロースバリアーが、植物細胞を物理的に守るとともに病原菌の攻撃を妨げる、といったシンドロームが信じられていた。傷害に応答するカロース合成酵素AtCSL5 (AtCalS12)の遺伝子破壊変異株は、病原菌によって誘導されるカロース合成能を失ったが、逆に病原菌に対する抵抗性能力を獲得した。Nishimuraら(3)は、カロース合成は防御応答として誘導されるが、カロースの合成は逆にサリチル酸に基づく病害抵抗性経路をフィードバック阻害することを示した。サリチル酸と病原菌に応答する遺伝子は、上流で制御されており、感染後はこれらの遺伝子は過剰に発現される。一方、Jacobsら(4)は、カロースは病原菌感染において栄養物の摂取を容易にさせたり、植物と病原菌の相互作用を抑制し、むしろ菌を守る作用があるのではないかと示唆している。

植物におけるカロースの機能は何であるのだろうか?

林 隆久(京都大学生存圏研究所)
References (1) Hayashi T, Read SM, Bussell J, Thelen M, Lin FC, Brown Jr RM, Delmer DP: UDP-Glucose:(1→3)-β-glucan synthases from mung bean and cotton. Plant Physiol, 83, 1054-1062, 1987
(2) Hirai N, Sonobe S, Hayashi T: In situ synthesis of β-glucan microfibrils on tobacco plasma membrane sheets. Proc Natl Acad Sci USA, 95, 15102-15106, 1998
(3) Nishimura MT, Stein M, Hou BH, Vogel JP, Edwards H, Somerville SC: Loss of a callose synthase results in salicylic acid-dependent disease resistance. Science, 301, 969-972, 2003
(4) Jacobs AK, Lipka V, Burton RA, Panstruga R, Strizhov N, Schulze-Lefert P, Fincher GB: An Arabidopsis callose synthase, GSL5, is required for wound and papillary callose formation. Plant Cell, 15, 2503-2513, 2003
2005年6月30日

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