ヒトES/iPS細胞の最外層を覆う細胞の顔・糖鎖を網羅解析することで、ヒトES/iPS細胞の顔の特徴を明らかにするとともに、ヒトES/iPS細胞に反応するrBC2LCNと呼ばれるレクチンを発見した。そしてrBC2LCNを用いて細胞治療用製品に残存するヒトES/iPS細胞を検出、除去する技術を開発した。さらに最近ではヒトiPS細胞の未分化状態から逸脱した細胞である「逸脱細胞」を検出する技術を開発した。ここでは、筆者らがこれまで開発してきた糖鎖を基盤としたヒトES/iPS細胞品質管理技術についてご紹介したい。
ガレクチンはずいぶん有名になったが、あいかわらずわかりにくい分子である。登場する舞台は多岐にわたるが、主役らしいふるまいはあまり見せない。天職は脇役のようだが、いないと絶対に困るメンバーだ。いろいろな相手とつきあうが、その条件は、素性(たんぱく質か、脂質か、プロテオグリカンか)や地位はどうでもよく、お気に入りの衣装(糖鎖)さえまとっていればよい。だから細胞外たんぱく質だったら、ほとんど(1万種類以上)が相手になりうる。ただし、あまり深いつき合い方はしない。ガレクチンの本質がとらえにくい原因のひとつが、こうした広くて浅い社交性にある。この講話では、こうした点を踏まえて、いくつか基礎的なことを再点検してみよう。