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Current Issue

Regenerative medicine and glycans

幹細胞における糖鎖の構造と機能から再生医療への応用へ

西原 祥子

last updated 2021/08/01 (Glycoforum. 2020 Vol.24 (4), A9)

細胞表面に提示される糖鎖は、組織特異的に、また、発生段階特異的に発現が制御されており、ステージ特異的胚性抗原(SSEA)など、胚性幹細胞(ES細胞)のマーカーとしても使われている。しかし、幹細胞における糖鎖の役割は、よくわかっていなかった。そこで、我々は、糖鎖を合成する糖転移酵素を主な対象としてマウスES細胞でRNAiスクリーニングを行い、現在までに、ナイーブな多能性状態を維持するために必要な4種の糖鎖構造、(1)LacdiNAc構造(GalNAcβ1,4GlcNAc)、(2)ヘパラン硫酸、(3)O-GlcNAc、(4)ムチン型O-結合型糖鎖の1つであるT抗原(Galβ1,3GalNAc)を明らかにした。これらの糖鎖は、いずれも、ナイーブな多能性状態の維持に必要な白血病抑制因子(LIF)、骨形成因子(BMP)、Wntシグナル、あるいは、分化の出口となるFGF4シグナルのどれかに関与していていた。また、ショウジョウバエから哺乳類まで進化的に保存されている糖鎖構造でもあった。一方、ES細胞とエピブラスト様細胞は、エピブラストへの最初の細胞系統の決定をin vitroで再現し、多能性状態の遷移の根底にある分子メカニズムの解析を可能にする。両者の細胞の全グライコーム解析を行ったところ、全てのタイプの糖鎖構造が発生の初期段階から劇的に変化することが分かり、この変化には、ポリコーム抑制複合体2による様々な糖転移酵素の発現を同時に制御するネットワークが関与していた。ここでは、これらの我々の研究を中心に、再生医療への応用も含めて紹介する。

Galectins

流動的なガレクチン格子:糖鎖の生物学的等価性(bio-equivalence)を読み解く鍵

Haik Mkhikian / Michael Sy /
James W. Dennis / Michael Demetriou

last updated 2021/08/01 (Glycoforum. 2020 Vol.24 (4), A10)

ガレクチン格子は、ガレクチンと細胞表面に存在する糖タンパク質間の多価の結合によって生じる構造体である。 結合パートナーをすばやく入れ替えることができ、このため、膜上を自由に拡散する糖タンパク質と、安定した糖タンパク質複合体との中間的構造―すなわち液-液相分離としての特徴を併せもつ。ガレクチン格子は、(i)受容体や溶質トランスポーターの被覆ピットを介したエンドサイトーシス(coated-pit endocytosis)やカベオリン領域への流れを制御し、(ii)免疫シナプスや焦点接着複合体(focal adhesion complexes)のような細胞間接触の機会創出を演出している。ゴルジ体におけるN型糖鎖の構造変化(リモデリング)を起こすようなUDP-GlcNAc供給に変化が起こると、ガレクチンの糖タンパク質への親和性にも変化が起こり、ひいてはガレクチン格子による細胞表面の糖タンパク質の動態にも変化が生じる。さらにUDP-GlcNAc供給は代謝制御を受けている。この格子モデルは、マウスの免疫制御、がんの進行、グルコースホメオスタシスといった現象において立証されている。本稿では、代謝、ガレクチン、および糖タンパク質リガンドの間に存在する相互作用に加え、炎症や自己免疫の予測・治療におけるこのモデルの有用性について概説する。

Galectins

ミルクオリゴ糖とガレクチン: “番外編” グライコサイエンスの観点から

飼育下でミルクオリゴ糖は変化するか:構造収束と多様化のメカニズム

浦島 匡 / 佐藤 祥子 / 小林(仁尾)純子 /
平林 淳

last updated 2021/08/01 (Glycoforum. 2020 Vol.24 (4), A11)

本編「ミルクオリゴ糖とガレクチン」(Glycoforum. 2021 Vol.24 (2), A3)の中で、ラットミルク中のオリゴ糖のほとんどは3’-SLと6’-SLであるのに対し、齧歯目のローランドパカ(Cuniculus paca)のミルクはそれ以外にもより複雑なミルクオリゴ糖を含んでいることを紹介した。このことから直観されるのは、実験動物のミルクオリゴ糖は多様性を失い、単純化しているのでは、という考えである。一方、最近極微量ではあるが、ラットやマウスの乳にも硫酸化した3’-SLなど他のオリゴ糖も発見されている。ミルクオリゴ糖の構造多様性はどのようにして決定しているのであろうか。「番外編」第2弾はこの点に絞って議論してみたい。

Glycotopics

分子シミュレーションによる新型コロナウイルススパイクタンパク質の糖鎖ダイナミクスの解析

森 貴治 / 杉田 有治

last updated 2021/08/01 (Glycoforum. 2020 Vol.24 (4), A12)

近年のCOVID-19パンデミックの原因でもある新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、ヒト細胞に感染する初期段階において、ウイルス表面に存在するスパイクタンパク質がヒトACE2受容体に結合する。この過程においてスパイクタンパク質の構造は「ダウン型」から「アップ型」へ変化することがクライオ電顕実験により明らかになってきた。また、スパイクタンパク質の表面は多くの糖鎖によって修飾されていることが生化学実験から分かってきた。糖鎖には抗体からの防御、即ち免疫回避の役割があると考えられてきたが、スパイクタンパク質の構造変化における役割については分かっていなかった。本稿では、筆者らが行ったスパイクタンパク質に対する分子動力学シミュレーションにより明らかになった糖鎖の役割について解説する。

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