Glycolipid
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KDN-ガングリオシド

  KDNは、アセチルノイラミン酸とN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)と並び、シアル酸の3大分子種のひとつ。Neu5Ac、Neu5Gcとは、その5位の炭素にN-アシル基でなく水酸基が結合している以外は、立体化学も含め完全に同一の構造をもつ(図1)。デアミノノイラミン酸ともいわれる。正式名は、2-keto-3-deoxy-D-glycero-D-galacto-nononic acid または3-deoxy-D-glycero-D-galacto-nonulosonic acidであり、略称KDNは前者からとった。KDNは、1986年、ニジマス卵ポリシアロ糖タンパク質の微量な酸性糖残基として発見された1
図

図1
 KDN-ガングリオシドは、KDNを結合するスフィンゴ糖脂質のことであり、1991年、初めてシアル酸残基としてKDNをもつGM3、すなわち(KDN)GM3がニジマス精子中に見いだされた2。KDN残基はバクテリアから哺乳動物まで広く存在分布するが、KDN-ガングリオシドは、魚類卵、卵巣液、精巣、精子に見いだされている他に3、哺乳動物において、種々の細胞、組織に微量であるが存在が確認されている。

 構造が明らかにされたものは以下のとおり:(KDN)GM3, II3KDN alpha-LacCer; (KDN)GD1a, IV3KDN alpha, II3KDN alpha-Gg4Cer; (KDN,Neu5Ac)GD1a, IV3KDN alpha, II3Neu5Ac alpha-Gg4Cer and IV3Neu5Ac alpha, II3KDN alpha-Gg4Cer; (KDN)GD1 alpha, IV3KDN alpha, III6KDN alpha-Gg4Cer; (KDN,Neu5Ac)GD1 alpha, IV3KDN alpha, III6Neu5Ac alpha-Gg4Cer; (O-acetylated KDN)GD1a, IV39-O-acetyl-KDN alpha, II3KDN alpha-Gg4Cer.


 KDN残基は種々の細菌、ウイルスおよび動物由来のシアリダーゼの作用に対して抵抗性あるいは低感受性であるが、少数例ながらKDNケトシド結合を加水分解する酵素の存在が知られている。ひとつは、KDN残基と同時にNeu5Gc残基も切断するKDN-シアリダーゼと呼ばれる一群の酵素で、ニジマス卵巣の他、ドジョウの肝臓、カキ、ヒトデ゙の肝膵臓に存在が知られている。もうひとつは,Neu5AcとNeu5Gc残基には作用せず,KDN残基のみを切断するKDNアーゼであり、Sphingobacterium multivorumが生産するKDNase Sm(4)、およびカキ肝膵臓由来の酵素(5)が知られている。
北島 健(名古屋大学・生物分子応答研究センター)
References(1) Nadano, D, Iwasaki, M, Endo, S, Kitajima, K, Inoue, S, Inoue, Y J. Biol. Chem. 261, 11550-11557, 1986
(2) Yu, S, Kitajima, K, Inoue, S, Inoue, Y, J. Biol. Chem. 266, 21929-21935, 1991
(3) Yu, S, Kitajima, K, Inoue, S, Khoo, K-H, Morris, H R, Dell, A, Inoue, Y, Glycobiology 5, 207-218, 1995
(4) Kitajima, K, Kuroyanagi, H, Inoue, S, Ye, J, Troy, FAII, Inoue, Y, J. Biol. Chem. 269, 21415-21419, 1994
(5) Pavlova, NV, Yuziuk, JA, Nakagawa, H, Kiso, M, Li, SC, Li YT, J. Biol. Chem. 274, 31974-31980, 1999
2001年 4月 15日;改定

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