同じ糖鎖構造を作るのに、なぜ生体は複数の酵素を必要とするのであろうか。ペプチドに結合したN-アセチルガラクトサミンにシアル酸をα2-6-結合で転移する酵素 (STGal- NAc)は、少なくとも3種類存在することが知られている。これらのシアル酸転移酵素はそれぞれ糖受容体である基質に対する特異性が異なり、Siaα2-6GalNAc-Ser/Thr, Galβ1-3 (Siaα2-6)GalNAc-Ser/Thr, Siaα2-3Galβ1-3(Siaα2-6)GalNAc-Ser/Thrの異なるO-型糖鎖が最終的に作られる。またβ-1,3-GalTに関して見出された3つのアイソザイムβ-1,3-GalT-I, II, IIIの間でも、糖供与体UDP-Galや糖受容体GlcNAcβ-pNPに対する親和性がそれぞれ異なり、こうした酵素の性質はそれぞれの酵素が発現している組織で作られる複合糖質糖鎖の構造に大きく反映していることであろう。β-1,4-GalT に関しても新たにβ-1,4-GalT-II, III, IV, V, VIが存在することが明らかとなったが、いずれもβ-1,4-GalT-Iとその性質が異なり、今後の詳細な基質特異性の解明からその存在意義が明らかになってゆくものと思われる。ペプチドのセリンやスレオニンにN-アセチルガラクトサミンを転移する酵素 (GalNAcT)に関しては、これまでに8つの機能的酵素が存在すること、さらに7つ以上の相同性をもつ遺伝子の存在が見出されている。それぞれのGalNAcTはペプチドに対する基質特異性が異なり、これがドミノ式にペプチド上に集密化したO-型糖鎖の付加を可能にしていると考えられる。