Progeoglycan
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ロイシンリッチプロテオグリカン

  スモールロイシンリッチプロテオグリカン(SLRPs)ファミリーには、バイグリカン、デコリン、フィブロモジュリン、ルーミカン、PG-Lb、ケラトカン、ミーメカンが含まれる。すべての分子のコア蛋白質は、その70%以上がロイシンに富んだ特徴的な配列、ロイシンリッチリピート(LRR)を含んでいる(図1)。これらのプロテオグリカンは合成後分泌され、細胞外マトリックスに存在する。LRRは、様々な他の分子にも認められることから、SLRPsは、そのようなLRRを含む分子と共にLRRスーパーファミリーを形成している。SLRPsにおけるLRRドメインは、システインクラスターを含むN末端とC末端にはさまれている。ジスルフィド結合に関与している可能性のあるシステイン残基が、N末端には4個、C末端には2個存在している。 KobeとDeisenhoferにより提唱されたLRRのコンセンサスシークエンスは以下の通りである(1)。 xLxxLxLxxN±xaxx±a±±±±a±±a±±x±±(xはアミノ酸、Lはロイシンまたはイソロイシン、Nは一般的にアスパラギンだがシステインまたはスレオニンも可、±はアミノ酸がない場合もある。aは疎水性アミノ酸を示す。)LxxLxLxxNxL/IをLRRのコンセンサスシークエンスとする報告もある。最近、LRRを15個持つリボヌクレアーゼインヒビターのX線結晶解析により、LRRはα-ヘリックスとβーシートからなる基本構造が、何回か繰り返した特徴的な馬蹄形に似たコイル構造をとっていることがわかってきた(2)。以下にそれぞれの分子の特徴を述べる。


バイグリカンは38kDaのコア蛋白質に二本のコンドロイチンまたはデルマタン硫酸鎖を側鎖に持つプロテオグリカンである。コンドロイチン硫酸鎖を持つバイグリカンは、胎児の骨から単離され、デルマタン硫酸鎖をもつバイグリカンは、関節軟骨より単離された。バイグリカンは、骨格筋、骨、軟骨、血管内皮、角化細胞の細胞表面や細胞外マトリックスに多く存在している。バイグリカンは、グリコサミノグリカン鎖を2本持つところから名付けられたが、プロテオグリカン I、PG-I,DS-PGI, PG-S1とも呼ばれる。


デコリンは36 kDaのコア蛋白質にコンドロイチンまたはデルマタン硫酸鎖を側鎖に一本持つ。コンドロイチン4硫酸を持つデコリンは成長軟骨より単離され、関節軟骨や腱からは、デルマタン硫酸鎖をもつデコリンが単離された。デコリンは、骨、腱、鞏膜、皮膚、大動脈、角膜に多く存在している。スモールプロテオグリカン II, PG-S2, PG-40またはDS/CS-PGIIとも呼ばれる。in vitroの実験で、I型及びII型のコラーゲンと結合し、コラーゲン線維の形態の制御作用の役割が示唆されている。


フィブロモジュリンは、ケラタン硫酸プロテオグリカンで様々な結合組織(軟骨、腱、皮膚)に存在している。コア蛋白質は、357アミノ酸残基で42kDaである。I型、II型コラーゲンと結合し、コラーゲン線維形成を制御しているという。


ルーミカンはケラタン硫酸プロテオグリカンで角膜、筋肉、腸、軟骨を含む様々な組織に存在する。コア蛋白質は、338アミノ酸残基で37kDaである。角膜におけるルーミカンは、ケラタン硫酸の硫酸化度が高いが、その他の組織におけるルーミカンのケラタン硫酸は、硫酸化度が低いか硫酸化されていない糖蛋白質型で存在している。角膜の透明度の獲得、保持の役割を担っていることからこの名前が付いた。


PG-Lbは、初めニワトリ胚の長管骨骨端軟骨より単離されたコンドロイチン・デルマタン硫酸プロテオグリカンである(3)。近年、マウスでの存在がcDNA解析とノーザン分析から示されている。ウシで最近報告されたエピフィカンやヒトのDSPG3は、このPG-Lbに相当する分子であることが示唆された。他のSLRPsと異なり、PG-Lbは肢骨骨端軟骨の扁平細胞領域に特異に存在している。ヒトのDSPG3については、軟骨以外に、靭帯、胎盤にも存在しているという。


ケラトカンは、ケラタン硫酸を側鎖に持つことから名付けられた。ルーミカンやフィブロモジュリンよりも限定された領域に存在している。角膜、鞏膜では豊富に存在するが、皮膚、腱、軟骨には少ない。角膜においては硫酸化度の高いケラタン硫酸を側鎖にもつが、ルーミカンのように他の組織中では糖蛋白質型で存在する。


オステオグリシンはLRPスーパーファミリーの一員であるが、最近ウシ角膜においてケラタン硫酸プロテオグリカンとして存在していることがしめされ、ミーメカンと名付けられた。
図
図の説明
ロイシンリッチプロテオグリカンの分子構造モデル
コア蛋白質のサイズ及びLRR, Glycosylation siteの位置は実際の大きさ、位置を表していない。
望月由木子、篠村多摩之、木全弘治(愛知医科大学・分子医科学研究所)
References(1) Kobe, B, Deisenhofer, J. Trends Biochem, Sci. 19, 415-421, 1994
(2) Kobe, B, Deisenhofer, J. Nature 366, 751-756, 1993
(3) Shinomura, T, Kimata, K, Oike, Y, Noro, A, Hirose, N, Tanabe, K, Suzuki, S. J. Biol. Chem. 258, 9314-9322, 1983
1998年 3月 15日

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