Glycoprotein
English












シアリルモチーフ

　シアル酸転移酵素(ST)は糖転移酵素の一種であり、以下のような反応機構により、ドナー基質であるCMP-シアル酸から、受容体基質である糖タンパク質及び糖脂質中の糖鎖構造にシアル酸残基を転移する反応を触媒する。


　　　CMP-シアル酸　＋　HO-R　→　CMP　＋　シアリル-OR


現在までにクローニングされた全てのシアル酸転移酵素は、膜内腔部位に３つの保存領域、すなわちシアリルモチーフL、S、VSを有することが知られている（図、参考文献１、２）。
図
図
図
図
図の説明　A,　シアル酸転移酵素の概要図。シアリルモチーフL,S,VSの相対的な位置を示している。
　B,　4種類のシアル酸転移酵素中のシアリルモチーフL,S,VSのアミノ酸配列。
　全シアル酸転移酵素で共通のアミノ酸残基を、赤太文字で示している。
ST がシアリルモチーフL内に部位特異的変異を持つと、CMP-シアル酸に対するKm値が野生型の価と比べ上昇することが観察されていることから、シアリルモチーフLは、ドナー基質であるCMP-シアル酸との結合に関与すると考えられている（３）。また、最近の報告では、シアリルモチーフSへの変異がドナー及び受容体基質の双方に対するKm値を変化させたことから、シアリルモチーフSが両基質との結合に関与することが示唆されている（４）。STのCOOH末端領域で新たな保存領域が観察されシアリルモチーフVSと命名されたものの、この領域の果たす役割は未知のままである（２）。これらの領域がどのように触媒反応に関与しているか理解するためにも、シアル酸転移酵素の結晶化による構造解析が待ち望まれる。

　全シアル酸転移酵素にこのような保存領域が存在するという利点を生かし、PCRを用いた手法により多数のシアル酸転移酵素遺伝子クローニングが成功を収めている（５）。
川口（北爪）しのぶ（理化学研究所）
References(1) Tsuji, S, Datta, A, Pauson, J C : Systematic nomenclature for sialyltransferases. Glycobiology, 6, v-vii. 1996
(2) Geremia, RA, Harduin-Lepers, A, Delannoy, P : Identification of two novel conserved amino acid residues in eukaryotic sialyltransferases: implications for their mechanism of action.Glycobiology, 7, v-vii. 1997
(3) Datta, A, Paulson, J C : The sialyltransferase"sialylmotif" participates in binding the donor substrate CMP-NeuAc. J.Biol. Chem. 270, 1497-1500, 1995
(4) Datta, A K, Sinha, A, Paulson, J C : Mutation of the sialyltransferase S-sialylmotif alters the kinetics of the donor and acceptor substrates. J. Biol. Chem. 273, 9608-9618, 1998
(5) Tsuji, S : Molecular cloning and functional analysis of sialyltransferases. J. Biochem. 120, 1-13.1996
1998年 9月 15日
GlycoscienceNow INDEXReturn to Top Page