II. セルラーゼ触媒糖転移反応
我々の関心は、スフィンゴ糖脂質のミミック単位として脂肪族基をβ-グリコシド結合でラクトース単位に結合させる酵素的なアプローチにあった。 一連の脂肪族β-ラクトシドが、水反応系でTrichoderma reesei由来セルラーゼを用いLacβ-pNP供与体から各種1-アルカノール(n=2〜12)受容体へのβ-ラクトシル転移反応により簡便に合成出来ることが判った。本反応でエタノール受容体を用いた場合、供与体当た18%の収率でエチルβ-ラクトシドを生成した。しかしながら、本収率はアルカノール受容体のアルキル鎖の長さがC2〜8へと短くなるにつれて減少した。オクタノールの場合には、オクチルβ-ラクトシドの収率は1%以下であった。この収率の問題は、界面活性剤としてコール酸ナトリウムを用いることで一部解決することが出来た。1-オクタノールと1-ドデカノール受容体をコール酸ナトリウム存在下で反応させたところ転移物としてオクチルβ-ラクトシドとドデシルβ-ラクトシドが供与体当たり13%と5%の収率で得られた。反応系へのコール酸ナトリウムの添加は基質の溶解度を上げるばかりか著しい収率の向上をもたらした>。3)
本酵素はまたLacNAc転移活性を有していたのでN-型糖鎖のアンテナリーの部分構造を合成するのに利用することが出来た。調製用スケールでの合成がLacNAcβ-pNP供与体とManおよびGlc受容体とを用いて行われた。本酵素はもっぱら供与体からN-アセチルラクトサミン単位をManおよびGlc残基のOH-4位に転移させる活性を有していた。結果、Galβ1-4GlcNAcβ1-4ManおよびGalβ1-4GlcNAcβ1-4Glcを供与体当たりそれぞれ13 %と9 %の収率で得ることが出来た。これら生成物は、簡便に活性炭-セライトカラムによる一段階のクロマト操作により単離出来た。3)
碓氷泰市(静岡大学・農学部)
References
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β-lactosides as mimic units of glycosphingolipids by use of Trichoderma reesei cellulase, Arch. Biochem. Biophys. 385, 70-77, 2001