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蛍光偏光法−溶液中における糖−タンパク質間相互作用

  蛍光偏光法は溶液中における糖鎖-タンパク質、抗原-抗体あるいはタンパク質間相互作用を固定化やトレーサー分子の分離作業をすることなく、その相互作用を直接分析することができるため、イムノアッセイや臨床分野における血中薬物濃度測定などに利用されている。

 蛍光偏光法の原理は1926年Perrinらによって確立された(1)。液体中の蛍光性分子が平面偏光により励起されると、蛍光性分子中のフルオロフォアが励起状態でかつ、定常状態を維持しているとき、同一平面に偏光蛍光を発する。しかしフルオロフォアが励起状態中に、ブラウン運動により回転すると励起平面と異なる平面へ蛍光を発し蛍光偏光が解消される(Fig.1)。
Fig.1 Principle of Fluorescence Polarization
 つまり蛍光偏光度とは励起されてから蛍光を発するまでの間に蛍光性分子が回転する度合いを表す。一般に蛍光性プローブにより標識されたオリゴ糖鎖など分子容積の小さな分子は溶液中でブラウン運動により激しく回転するため低い偏光度を示す。一方、レクチンなどのタンパク質分子がオリゴ糖鎖に結合すると溶液中におけるブラウン運動は減少し、偏光度は上昇する。よって蛍光偏光法では偏光度の変化を指標として溶液中における糖−タンパク質間相互作用を解析することが可能となる。

 応用として蛍光偏光法により蛍光標識糖鎖あるいは糖ペプチドを用いて、レクチンの糖結合特異性を解析することが可能である。

 最近、Odaらは蛍光偏光法を用いて蛍光標識した糖タンパク質糖鎖ならびに糖ペプチドと植物レクチンとの結合実験について検討し、サフラン球根由来レクチンがN-グリカンコア糖鎖を特異的に認識することを報告した(2-3)(Fig.2)。

Fig.2
Specific recognition of the core glycan by the lectin from saffron bulbs.
 蛍光偏光法は操作が簡便であるために糖-タンパク質間の相互作用に関する情報を知る上で重要な手段となることが期待される。
木下充弘、小田泰雄(近畿大学・薬学部)
References (1) Perrin, F. J. Phys. Rad. 1, 390-401, 1926
(2) Oda, Y., Kinoshita, M., Nakayama, K. and Kakehi, K. Biol. Pharm. Bull. 21, 1215-1217, 1998
(3) Oda, Y., Nakayama, K., Abdul-Rahman, B., Kinoshita, M., Hashimoto, O., Kawasaki, N., Hayakawa, T., Kakehi, K., Tomiya, N. and Lee, Y.C. J. Biol. Chem. 275, 26772-26779, 2000
2001年 3月 15日

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