GALECTIN
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マメ科レクチンと糖鎖認識

  植物マメ科レクチンは、植物レクチンの中で最も大きなレクチンファミリーを形成し70種類以上のものが知られている。分子量3万のサブユニットの2量体または4量体から成り、サブユニットあたり一つの糖鎖認識部位を持つ。糖の結合にはカルシウム、マンガンなどの金属イオンが必須である。サブユニットは約270アミノ酸から成り、一次構造は豆科レクチン間でN末端からC末端に至るまで一様に類似し、アミノ酸レベルで40%前後の相同性を持つ。X線構造解析から得られた結果によると、立体構造は一次構造よりさらに類似している。動物C型レクチンと並んで、多様な糖結合特異性を持つことがこのレクチンファミリーの特徴でもある。この糖結合特異性の多様性は、糖結合部位が2〜3糖を同時に認識することができる大きさを持っていることも一つの理由である。糖結合部位は2つのループで糖鎖を挟み込む構造になっており、その奥のベーターシート上のアスパラギン酸とグリシンが糖との結合に関与している。これらの2つのアミノ酸は基本的に全てのマメ科レクチンに保存されている。一方、2つのループのうちの1つは、カルシウム、マンガンを配位する金属結合部位の一部であり、これらの金属イオンが糖結合部位を構成する一つのループの構造を固定し、かつ糖との結合力を強めている。また、このループの構造の多様性が糖結合特異性の多様性を生んでおり、抗体の超可変部位と類似の部位と考えることができている。マメ科レクチンの糖結合特異性は便宜上、ハプテン糖となる単糖によって分類されているが、これらのサブグループのレクチン間ではこの糖との結合に関与するループのアミノ酸配列に相同性が認められる。また、このループにランダムな改変を加え作成したユニークな特異性を持つ人工レクチン(サイボーグレクチン)も作られている。


 植物体において、これらのレクチンは生体防御分子として機能していると考えられており、種子内に大量に含まれているほかに、根に発現したレクチンを介して根粒細菌との特異的な接触が行われ、レクチンの糖結合特異性の違いが共生する根粒細菌の宿主特異性を規定していることが知られている。動物細胞においてもマメ科レクチンと起源を同じくするタンパク質が存在している。分泌蛋白質や膜タンパク質を輸送するカーゴレセプターであるERGIC-53やVIP36は、これらのマメ科レクチンファミリーのレクチンドメインを内腔側に持ち、小胞体とゴルジ体の間(cis Golgi network)およびゴルジ体と細胞膜間(trans Golgi network)で、それぞれ糖蛋白質の選別・輸送に関わっていることが明らかになっている。
図図の説明
マメ科レクチンの立体構造。黄色はベーターシート、赤はαヘリックス、青はループを示す。
山本 一夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
References(1) 山本一夫:レクチンの構造、機能、および糖鎖認識機構 生化学 66, 1111-1129, 1994
(2) Yamamoto, K, Konami, Y, Osawa, T: Purification and characterization of a carbohydrate-binding peptide from Bauhinia purpurea lectin. FEBS Lett. 281, 258-262, 1991
(3) Yamamoto, K, Konami, Y, Osawa, T, Irimura, T: Carbohydrate-binding peptides from several anti-H(O) lectins. J. Biochem. 111, 436-439, 1992
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2001年 4月 15日;改定

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