• Home 
  • Series 
  • Galectins 
  • 流動的なガレクチン格子:糖鎖の生物学的等価性(bio-equivalence)を読み解く鍵 
Aug 01, 2021

流動的なガレクチン格子:糖鎖の生物学的等価性(bio-equivalence)を読み解く鍵
(Glycoforum. 2021 Vol.24 (4), A10J)

DOI: https://doi.org/10.32285/glycoforum.24A10J

Haik Mkhikian1, Michael Sy2, James W. Dennis3,4* and Michael Demetriou2*

1 Department of Pathology and Laboratory Medicine, University of California, Irvine, USA
2 Department of Neurology and Institute for Immunology, University of California, Irvine, CA 92697, USA.
3 Lunenfeld Tanenbaum Research Institute, Mount Sinai Hospital, 600 University Avenue R988, Toronto, Ontario, Canada M5G 1X5
4 Department of Molecular Genetics, & Department of Laboratory Medicine and Pathology, University of Toronto, Canada
* Corresponding authors:
James W. Dennis: DENNIS@lunenfeld.ca
Michael Demetriou: mdemetri@uci.edu

Haik Mkhikian

Haik Mkhikian
Dr. Haik Mkhikianは、2005年にカリフォルニア大学アーバイン校で哲学と生化学・分子生物学の学士号を取得した。さらに、メリーランド州ベセスダのNIHでUGSP奨学生として1年間過ごした後、カリフォルニア大学アーバイン校に戻ってMSTPのトレーニングを受けた。大学院では、Dr. Michael Demetriouの研究室で、T細胞におけるN型糖鎖分岐の制御と、多発性硬化症におけるその制御の異常について研究した。2016年にMD/PhDの研修を終えた後、カリフォルニア大学アーバイン校にリサーチトラックの臨床病理学レジデントとして残り、現在はリサーチフェローとして勤務している。

Michael Sy

Michael Sy
Dr. Michael Syは、カリフォルニア大学アーバイン校神経学部門の助教であるとともに、バージニア州ロングビーチにある多発性硬化症地域センター(Multiple Sclerosis Regional Center)の共同ディレクターも勤めている。2002年にイェール大学を卒業した後、2011年にカリフォルニア大学アーバイン校のMedical Scientist Training ProgramでMDおよびPhDを取得した。さらに、UC Irvine Medical Centerにおいて、神経学のレジデント研修と神経免疫学のフェローシップ(2016年)を修了した。現在は、包括的かつホリスティックな患者ケアの提供に加えて、多発性硬化症のミエリン形成に関する基礎、橋渡し、および臨床研究を行っている。

James Dennis

James Dennis
Dr. James Dennisは、モントリオールのコンコルディア大学で数学の学士号を取得後、キングストンのクイーンズ大学で生化学の博士号を取得した(1978年)。ハイデルベルクのドイツがん研究センター(DKFZ)でポスドクとしてトレーニングを受けた後、Terry Foxフェローシップを獲得し、トロント大学のDr. Harry Schachterのもとで研究を行った(1980年)。クイーンズ大学の助教に就任した後(1982年)、ルーネンフェルド・タネンバウム研究所の創設メンバーとなり(1985年)、さらにトロント大学分子遺伝学部門の教授となった。カナダ王立協会のフェローであり、糖鎖生物学分野のCanada Research Chairに選出されている。20件の特許を保有しているほか、200以上の論文を発表し、被引用回数は20,000回に達している。また、多くの優秀な学生を指導していることも特筆に値する。

Michael Demetriou

Michael Demetriou
Dr. Michael Demetriouは、トロント大学で修士号および博士号(1996年)を取得した(Dr. James Dennisの指導の下、分子遺伝学の博士号を取得)。トロント大学で神経科のレジデントを務めた後、ルーネンフェルド・タネンバウム研究所にいたDr. James Dennisのもとでポスドクとして糖鎖生物学のトレーニングを受け(2001年)、さらにカリフォルニア大学アーバイン校のDr. Stanley van den Noortのもとで神経免疫学の臨床フェローシップを修了した(2002年)。2001年には、カリフォルニア大学アーバイン校の教員となり、現在は神経学・微生物学・分子遺伝学分野の教授として、臨床・研究両面で活躍している。NIHから20年間継続して研究資金の提供を受けており、発表した44の論文は、5000回以上引用されている。また、NIHの2つの研究部会においてチャーターメンバーを務めたほか、これまでに9人の博士号取得者に加え、多数のポスドクおよび学部生を指導している。

要約

ガレクチン格子は、ガレクチンと細胞表面に存在する糖タンパク質間の多価の結合によって生じる構造体である。 結合パートナーをすばやく入れ替えることができ、このため、膜上を自由に拡散する糖タンパク質と、安定した糖タンパク質複合体との中間的構造―すなわち液-液相分離としての特徴を併せもつ。ガレクチン格子は、(i)受容体や溶質トランスポーターの被覆ピットを介したエンドサイトーシス(coated-pit endocytosis)やカベオリン領域への流れを制御し、(ii)免疫シナプスや焦点接着複合体(focal adhesion complexes)のような細胞間接触の機会創出を演出している。ゴルジ体におけるN型糖鎖の構造変化(リモデリング)を起こすようなUDP-GlcNAc供給に変化が起こると、ガレクチンの糖タンパク質への親和性にも変化が起こり、ひいてはガレクチン格子による細胞表面の糖タンパク質の動態にも変化が生じる。さらにUDP-GlcNAc供給は代謝制御を受けている。この格子モデルは、マウスの免疫制御、がんの進行、グルコースホメオスタシスといった現象において立証されている。本稿では、代謝、ガレクチン、および糖タンパク質リガンドの間に存在する相互作用に加え、炎症や自己免疫の予測・治療におけるこのモデルの有用性について概説する。

1. ありきたりの弱い結合がガレクチンの重要な特性である

ガレクチンは、β-ガラクトシドと結合する約130アミノ酸からなる特徴的な糖鎖認識ドメイン(carbohydrate recognition domain: CRD)をもつタンパク質の家系である1-4。ガレクチンが結合する糖鎖リガンドは、分泌経路の糖タンパク質の中に幅広く、しかも高濃度で存在している5,6。多細胞真核生物の適応拡散が起こった進化の比較的早い段階で、ガレクチン遺伝子家系は生じたとされるが、同時期に、ガレクチン結合部位の糖鎖構造形成に関与する転移酵素の遺伝子も生じたと考えられる7。すなわち、膜貫通型糖タンパク質上に提示されるN型糖鎖の合成に関わるゴルジ体酵素、N-アセチルグルコサミン転移酵素やβ-ガラクトシル転移酵素などである。

ガレクチンは細胞質で合成されるが、核や細胞表面にも局在している。ガレクチンの機能は、当初病原体を貪食・破壊するために、病原体上にあるβ-ガラクトシドを含む複合糖質を架橋することだったのだろう8。哺乳類細胞では、細胞質に存在する一部のガレクチンが、侵入してきた細菌の増殖を抑制するDanger受容体として機能している。例えば、Salmonella属菌が、真核細胞に侵入してリソソームを破壊すると、リソソームの内腔側にあるlysosomal-associated membrane glycoproteins(LAMP)のN型糖鎖が細胞質に露出する。ガレクチン-8(Gal-8)は、この露出したN型糖鎖に結合し、NDP52複合体を取り込み(リクルートし)、サルモネラを含む損傷したリソソームのポリユビキチン化とオートファジーを引き起こす9-11。Gal-8のN末端CRDがβ-ガラクトシドと結合し、加えてC末端CRDもNDP52の9アミノ酸からなる配列と結合することで、ペプチドと糖鎖の両方の認識が達成される。多くのガレクチンでβ-ガラクトシドに対する特異性は保たれているが、CRDの糖に対する結合は比較的弱いので、進化によってβ-ガラクトシドに似た新たな(non-conventional)リガンドに対し、親和性を獲得するような化学構造上の余地が残されている。しかしながら、多くの場合、進化とは親和性と特異性を同時に増加させる方向に進むわけではなく、むしろ機能獲得の方向へと進んでいく。遍在するβ-ガラクトシドに対するCRDの親和性の低さや、糖タンパク質を動的に架橋できる性質は、まさにガレクチンが多くの場面ではたらくために必要な生物物理学的な特質なのだが、この点については後述する。

ガレクチンは、プロト型(Gal-1、-2、-5、-7、-10、-11、-13)、直列反復型(Gal-4、-6、-8、-9、-12)、およびキメラ型(Gal-3)に分類される。CRDを1つ、または2つもつガレクチンは自己会合することができる。Gal-3は他のガレクチンとは異なり、1つのCRDのほかに、プロリンおよびグリシンに富む約120アミノ酸から成るドメインをN末端に持っている12。このドメインは天然変性(intrinsically disordered)の性質を有しており、多価リガンドの濃度が局所的に上昇するとGal-3の自己会合が促進される13

天然変性領域が含まれていることが、Gal-3を2価のN型糖鎖リガンドと最適な濃度で混合した場合に生じる相転移に必要である14。通常、膜貫通型糖タンパク質は複数のN型糖鎖修飾部位をもつため、ガレクチン格子形成において多価のパートナーとして機能する。このため、Gal-3が自己会合すると架橋形成能が高まる13,15,16。この格子は、多価/2価のガレクチンが細胞表面の様々な糖タンパク質と同時かつ多発的に相互作用することで形成される。Gal-1のように、CRDを1つしかもたないガレクチンが二量体化することもある17

高濃度では、架橋によって、液-ドロプレット相(例えばストレス顆粒など)と表現される特性を持つ可逆的な相転移が起こる18,19。ガレクチン格子によって生じる液-ドロプレット相には、多価や天然変性といった性質に加え、結合パートナーの迅速な入れ替えを伴う偶発的な結合・解離、粘性や表面張力、多様な相互作用の組み合わせ、ゴルジ体におけるN型糖鎖のリモデリングなどによって調節される親和性といった様々な性質を持ち合わせる20

2. ガレクチン格子は細胞表面における受容体動態を調節する

生細胞においては、ガレクチン格子は平面状の液-ドロップレット相であり、膜貫通型の糖タンパク質によって膜の近くに保持されている。多様な糖タンパク質から構成され、かつ柔軟な糖鎖構造によって、その配置は無定形状態である21,22図 1)。Gal-3のCRDは、N-アセチルラクトサミン二糖単位(LacNAc、Gal β1-3/4GlcNAc)との結合に際し、配座エントロピーを増加するが、これは高親和性の受容体-リガンド間結合にはあまり見られないことである。より大きなCRDドメインのエントロピー移動が、結合したN型糖鎖におけるエントロピー低下を補うと考えられ、そのことが迅速なリガンドの結合・解離やリガンド交換に有利にはたらくのだろう23,24。Gal-3およびGal-9は糖タンパク質受容体の側方への拡散速度を低下させることが、FRAP(fluorescence recovery after photobleaching)法を用いた測定によって示されている25。例えば、Gal-9濃度やN型糖鎖の分岐、エンドサイトーシスの速度が変化した場合、初代肝細胞上にあるグルカゴン受容体のFRAP半減期も、エンドサイトーシスによる損失から受容体を保護するのと同じように変化した26。また、細胞表面におけるGal-3の多量体化がFRET(fluorescence resonance energy transfer)法によって測定されている他27、β1インテグリン受容体に結合したGal-3格子の動態が一粒子追跡法によって測定されている28

一方で、ガレクチン格子は、安定性の高い糖タンパク質複合体に干渉し、エントロピーを増大させ、それによって入れ替え(ターンオーバー)が早まる。腫瘍細胞に最適濃度の組換えGal-3を添加すると、焦点接着におけるβ1-インテグリンのターンオーバー、シグナル伝達、および細胞移動が刺激されるが、それを超える濃度では、逆にGal-3が抑制的な作用を示すようになる29,30。 Gal-3は、真菌感染部位へのマウスの好中球の正常な移動に必要である31。また、基層の硬度もガレクチン格子と相互作用して細胞の運動性を制御する因子の1つであるが、この硬度の上昇にしたがってベル型の応答が生じることが観察されている32。相互作用因子の最適な比率および可逆性は、相転移系に要求される特性である。

他の変数の中では、細胞外マトリックスの密度や硬さが細胞上におけるN型糖鎖のリモデリングと関係しており、焦点接着のターンオーバー速度を決定している32。細胞の運動性に対する、同様に非線形的な作用は、組換えGal-8においても観察されている33,34。Gal-3も、T細胞と抗原提示細胞の間にある免疫シナプス(マイクロフィラメントによってアンカーされる細胞間結合)の動態を高める作用をもつ。このシナプスにおけるGal-3と糖タンパク受容体の相互作用は、T細胞活性化を引き起こすTCRとの接触に閾値を設け、遅延をもたらす35-37

図1
図 1. ガレクチンと糖タンパク質の相互作用はN型糖鎖の分岐と代謝によって制御されている
オリゴ糖転移酵素(OST)は、粗面小胞体(ER)の内腔においてNXS/T(X≠P)部位を修飾する。ガレクチンは、ゴルジ体でリモデリングされたN型糖鎖のN-アセチルラクトサミン(LacNAc)エピトープに結合する。
ガレクチンの糖タンパク質に対する親和性はリガンド密度とともに上昇し、このリガンド密度は分岐、伸長、および糖タンパク質配列中のN型糖鎖修飾部位数に伴って増加する。ガレクチンは、非古典的な分泌メカニズムによって細胞表面へのアクセスを獲得する。複雑になるのを防ぐために、Gal-3を5量体として示しているが、ガレクチン格子内では様々な微視的状態で自己会合しうる。Gal-3は、細胞表面の膜貫通型糖タンパク質を架橋して、格子または液-ドロップレット相の状態を形成し、安定複合体と自由拡散の中間的な状態を作り出すことで、(1)受容体チロシンキナーゼによるクラスター化や早期のシグナル伝達を阻害し、(2)エンドサイトーシスによる受容体の喪失を遅らせ、(3)カベオラ、Cav1足場タンパク質、およびその他のマイクロドメインと受容体の間の相互作用をめぐる競合を生じさせ、(4)細胞と基層、細胞と細胞の接着部のターンオーバーを促進する。ゴルジ体内腔では、Mgat1、2、4、および5といった酵素が、UDP-GlcNAcをドナー基質として得るために競合している。親和性(Km)が300分の1にまで低下することで、4本鎖型N型糖鎖合成においてUDP-GlcNAcに対する超高感度の応答が生じる。

3. ガレクチンおよび結合パートナーの調和的な進化

LacNAc二糖[Gal β1-3/4GlcNAc]に対するCRDの親和性は10〜100 μMの範囲にある38が、アビディティ(結合力総和)はLacNAcの密度が高まると大きく増強する39,40。哺乳類培養細胞でN型糖鎖のLacNAc合成に選択的な変異を起こすと、Gal-1, -3および-8の結合を約90%も減少させることから、これらの細胞においてはN型糖鎖が主要なガレクチンリガンドであることが示唆されている41

N型糖鎖修飾部位[NXS/T(X≠P)]は、遺伝的にコードされたタンパク質配列に規定されるため、糖タンパク質毎に異なった配置をもつ。折りたたまれたタンパク質の構造上におけるこの部位の数と位置は、ゴルジ体のリモデリング酵素との相互作用に影響を与えるので42-44、ガレクチンの架橋形成能にもその影響が及ぶ。しかしながら、ほとんどの糖鎖修飾部位は、N型糖鎖で占められている。それらの糖鎖の大部分は、ゴルジ体で起こるN型糖鎖の分岐に始まり、ポリラクトサミン(ploly-N-acetyllactosamine)の伸長、フコースやシアル酸によるキャッピングなどのさらなるリモデリングを受ける。また、LacNAcの密度は、N型糖鎖修飾部位の数の他、ゴルジ体のN-アセチルグルコサミン転移酵素(MGAT1、MGAT2、MGAT4a、b、c、およびMGAT5にコードされている)の発現量、および糖ヌクレオチド基質の供給度にも依存する45図 1)。

遺伝子発現の発生プログラムおよび環境条件により、ゴルジ経路における糖鎖の累積的な産生量が決定されている46。しかしながら、糖鎖構造の不均一性(heterogeneity)は、各糖鎖修飾部位に通常見られるものである。これは、アクセプター糖鎖基質に対する酵素間の競合47や糖ヌクレオチド濃度48に加え、酵素間の協調的な相互作用49やゴルジ体における糖タンパク質基質の通過速度50などが要因となって生じる。糖タンパク質にN箇所の糖鎖修飾部位があり、その部位それぞれの修飾可能な糖鎖構造がXである場合、指数関数的にはXn種のアイソフォームが存在する可能性がある。例えば、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor: EGFR)には11カ所のN型糖鎖修飾部位があるが、このうち8カ所は実際、ゴルジ体において修飾・リモデリングを受けている51。ある部位が取りうる糖鎖構造を15個と控えめに見積もっても、158=2,562,890,625という数のグリコフォームに達してしまう。これは個別に調べるにはあまりにも多すぎる数である52。また、この数は、細胞表面に存在するEGFRの数(約1~5x105)よりも3桁以上多い53

しかし、機能的に同等な(bio-equivalent)糖鎖を小さな機能クラスに分類することができれば、この問題は非常にシンプルなものになる。すなわち、上式における不確定な要素を減らすことができるため、ガレクチン-糖タンパク質間の相互作用を計算することが可能になる45。具体的には、細胞表面におけるガレクチンの結合とそれに伴う相転移は、単一のグリコフォームの有無よりも、むしろLacNAcの量/密度に大きく依存している。このように、ガレクチンやおそらく他の多段階のタンパク質翻訳後修飾の機能を解明するには、異なる構造をカタログ化するよりも、グリコフォーム内のLacNAc含量を明らかにする方が、アプローチとして適切であるといえる21。ストレスや発生の進行によってこれらのパラメータが変化した場合、グリコフォームの分布やガレクチンとの相互作用に与える影響を計算し、受容体シグナルや細胞挙動の変化の予測に利用することができる45

4. UDP-GlcNAcの可用性(availability)がガレクチン格子を制御する

LacNAc含量を制御し、ひいては糖タンパク質に対するガレクチンの親和性を制御する重要な因子の1つは、ヘキソサミン生合成経路(hexosamine biosynthetic pathway: HBP)からゴルジN型分岐糖鎖生合成経路(Golgi N-glycan branching pathway)へのUDP-GlcNAcの供給である45,54,55図 2D)。In silicoのシミュレーションおよび実験結果によると、N型分岐糖鎖生合成経路のUDP-GlcNAcに対する感度は非常に高いことが確認されており(ヒル係数、Hn)、さらにMGAT1からMGAT5に至るまでで、UDP-GlcNAcに対する親和性が約300分の1に低下している45。ゴルジ体内腔のUDP-GlcNAc濃度が上昇するにつれて、3および4本鎖構造を持つ糖鎖の合成量はシグモイド様、あるいはスイッチ様に増加する(図 2C)。これらの糖鎖上のGlcNAcはβ1,4ガラクトース転移酵素の基質であり、この酵素により3および4本鎖のLacNAcのアンテナ鎖が生成される。さらに、トランスゴルジにおいて、このLacNAc鎖から様々な長さのポリラクトサミンが伸長する。重要なのは、MGAT1の活性が上昇した場合、MGAT4およびMGAT5酵素へのUDP-GlcNAc供給量が減少することである。モデル系の解析では、これは高親和性のGal-3リガンド(3または4本鎖糖鎖)の合成低下につながると予測されている。この展開は直感に反するかもしれないが、癌細胞や非形質転換細胞、in vitroでのT細胞活性化において示されているほか、ヒトにおけるMGAT1の機能獲得型の多型や、自己免疫疾患における生化学的分析でも確認されている45,56

超高感度なN型分岐糖鎖生合成経路とその糖タンパク質基質との共進化も、ガレクチン格子の機能を理解するための手がかりとなる。N型糖鎖修飾部位数の少ない受容体は、多い受容体と比べて、UDP-GlcNAc濃度および分岐糖鎖量がより増加された段階でリクルートされる45(編集者訳注:ガレクチン格子により調節される膜糖タンパク質動態においては、N型糖鎖修飾部位数が少ない膜糖タンパク質のUDP-GlcNAc濃度変化に対しての反応が鈍いので、修飾部位数が多い膜糖タンパク質に見られるようなシグモイドカーブ様に調節される動態とは対照的に、ON-OFFスイッチ様な調節になることが明らかにされている)。サイトカイン受容体におけるN型糖鎖修飾部位数と密度は、UDP-GlcNAc濃度に合わせて、成長シグナルとその後の停止シグナルを促進するように進化してきたのだろう。例えば、8つの修飾部位を持つEGFRは、UDP-GlcNAc生合成などの代謝を促進し、これが2つのN型糖鎖しか持たないTGF-β受容体の分岐糖鎖修飾を促す。この促進により、TGF-β受容体を格子内にリクルートすることで、自己調節的 (autocrinely) にTGF-β/Smad2/3シグナルを増強させ、非形質転換細胞の増殖を抑制する45。N型糖鎖が1つしかないグルコーストランスポーターGLUT4の場合は、細胞内UDP-GlcNAc濃度増加により細胞表面におけるGLUT4の発現が増加し、結果としてON-OFFスイッチ様の応答となって顕れるが、このことは(GLUT4で)一気に多分岐化が起こったとするとつじつまが合う(図2 A:(編集者訳注)GLUT4は N型糖鎖が1つしかない糖タンパク質(黒線)の挙動をする)45,56

膵臓β細胞によるインスリンの放出は、GLUT2トランスポーター上にあるN型糖鎖の分岐やガレクチン格子にも依存している57,58。GLUT 1〜11はN型糖鎖の修飾部位を1つだけ持っているが、このことは、ガレクチン格子によるスイッチ様の調節、およびHBPを介したUDP-GlcNAc産生量による制御が必要ということと一致する。がん細胞では、Mgat4、Mgat5の発現上昇、およびHBPの活性上昇がしばしば観察されるが59,60、これらはUDP-GlcNAcに対する経路の超高感受性、および成長に対する負の制御の両方を抑制している61。したがって、反対方向にシグナルを送る受容体グループ間でN型糖鎖修飾部位(NXS/T(X≠P))の数が大きく異なるシステムでは、それぞれの受容体グループが格子にリクルートされるまでの時間がUDP-GlcNAc依存的となり遅延が生じる(図 2B)。このような例としては、肝臓のグルカゴン受容体やグルコースホメオスタシスが挙げられる26,62

このように、N型糖鎖の生合成とガレクチン格子の生物物理学的特性は、段階的(シグモイド様)、またはスイッチ様の調整可能な刺激-反応関係という形で、動物に選択的優位性を与えている(図 2C21。私たちが行ったN型糖鎖修飾部位の系統解析は、翻訳後修飾が選択の下で急速かつ広範に進化していることを示し、機能に関する洞察を与えてくれるようなモデルを提供している63

図2
図 2. ガレクチン格子モデルで見られる特性
(A)ガレクチン格子による細胞表面受容体のヘキソサミン生合成経路(HBP)依存的制御に関するODEシミュレーション。エンドサイトーシスを格子に対抗する主要な因子としてモデル化した。N型糖鎖分岐経路のUDP-GlcNAc増加に対する超高感受性の程度(ヒル係数)は、N型糖鎖が占有するNXS/T(X≠P)部位の数に反比例する(Lau et al. 2007より改変)。UDP-GlcNAcに対する感受性が極めて高いことで、格子内の受容体がNXS/T(X≠P)部位数に基づいて連続的に濃縮される。
(B)成長促進性のレセプターキナーゼ(RK1)は、NXS/T(X≠P)部位数および密度が高くなるような選択を受けている(黒の四角)。一方、RK2サブセットは、その多くが停止/形態形成シグナルと関連している(白丸)。
(C)HBPの代謝刺激、N型糖鎖分岐、およびガレクチン格子を介したRK1、RK2受容体間の応答ダイナミクスと相互作用の概念モデル。
(D)HBPは、基質をめぐって同化代謝と競合する。ホスホフルクトキナーゼ(PFK)およびグルタミナーゼ(GLS)の活性は、HBPと中心的な代謝のバランスをとる重要な制御ステップである。食物からのGlcNAcの回収または複合糖質のターンオーバーは、ゴルジ体のUDP-GlcNAc濃度において重要な因子である。形質転換細胞では、GFATのほかMGAT4やMGAT5といった酵素の発現が上昇していることが多く、これが格子の強度を高めている。

5. ガレクチン格子による免疫系の負の制御

T細胞で免疫シナプスにおけるT細胞受容体(TCR)クラスター化とシグナル伝達の閾値を調節しているはガレクチン格子である19。CD4/CD8共受容体の細胞表面保持と、TCRのクラスター化/シグナル伝達の制御による正の選択を介してT細胞が産生されるには、胸腺におけるガレクチン格子の動態が最適な状態になければならない19,37,64。ガレクチン格子は、末梢性T細胞が抗炎症性の制御性T細胞ではなく、炎症性のヘルパーTh1細胞やヘルパーTh17細胞に分化する反応を抑制しており、TCRの制御とともに自己免疫疾患のリスクを決定している19,54,56,64-67。同様の制御はB細胞でも観察される。B細胞がCD19共受容体を細胞表面に維持し、B細胞受容体応答を引き起こすには、最小限の高分岐型糖鎖の存在が必要である一方、格子強度が高まると、自然免疫ではたらく炎症性のToll様受容体応答が抑制され、B細胞依存性の自己免疫が制御される68,69

ヒトでは、MGAT1およびMGAT5の一塩基多型(single nucleotide polymorphisms: SNPs)が多発性硬化症(multiple scleorosis: MS)と関連している56,70。活性獲得型(gain-of-activity)のSNPsを持つMGAT1では、その発現が上昇する。さらにUDP-GlcNAcへの親和性がMGAT5よりも約300倍ことを考慮すると、MGAT1の発現上昇はMGAT5の基質(UDP-GlcNAc)を奪い、LacNAc-ガレクチン相互作用の動態を減弱させる。その結果、炎症性のT細胞およびB細胞応答を促進する。MSや他の自己免疫疾患のリスク因子としてよく知られているビタミンD3欠乏は、MGAT1のmRNA量を変化させ、糖鎖の分岐度を低下させるので、T細胞の活動亢進を引き起こす。ビタミンD3を補充すると逆の効果がはたくため、ガレクチン格子の強度が回復し、自己免疫が抑制される56,71

MGAT1の活性獲得型SNPs、および2つのN型糖鎖修飾部位のうち一か所が欠損するCTLA-4のSNPは、相加的にMSのリスクを上昇させる。経路の感受性が非常に高く、活性獲得型MGAT1がMGAT5へのUDP-GlcNAc供給を減少させるからだ。また、N型糖鎖修飾部位が欠損したことと相まって、CTLA-4は細胞表面のガレクチン格子に弱くしかとりこまれなくなり、T細胞増殖を負に制御する機能に遅滞が生じる45。CTLA4受容体は、免疫シナプスにおいてCD80およびCD86と結合し、TCRの共受容体であるCD28の活性を減弱させる。組織培養においてはGlcNAcを補うことによってCTLA-4濃度が回復し、またin vivoにおいても、GlcNAcを経口投与することで、マウスの実験的自己免疫疾患が抑制されるとともに、モデルと同様にシグナル伝達が正常に近くなる65,66

6. ガレクチンの糖鎖リガンドの生物学的等価性(bio-equivalence)

ガレクチンとの結合に使われるLacNAcエピトープは、構造的に異なるN型糖鎖の様々な位置に存在する。エピトープの喪失は、同じ糖鎖内の別の位置、または複数のN型糖鎖修飾部位を持つ糖タンパク質上の糖鎖間において獲得・代償されることが、実験的に示唆されている。このような結合部位の生物学的等価性は、複数のN型糖鎖修飾部位を持つタンパク質の糖鎖内、および糖鎖間に認めることができる18,26,45,54。例えば、Gal-3に対する4本鎖型糖鎖の親和性は、ポリラクトサミンユニットを1つまたは2つ有する3本鎖型糖鎖と等価である38。グリコフォームのレベルにおいても、3本鎖型糖鎖を2箇所に持っているものと、2本鎖型および4本鎖型をそれぞれ1か所ずつ有しているものは類似している45。Mgat5には相同遺伝子が存在しないにもかかわらず、細胞レベルでは、Mgat5欠損培養細胞にGlcNAcを補充すると、EGFRの細胞表面におけるGal-3との会合が完全にレスキューされる45,72。これは、 UDP-GlcNAc濃度の上昇によるMGAT4およびポリN-アセチルラクトサミン伸長酵素であるβ3GNTファミリーの活性上昇によってGal-3に関連した機能がレスキューされたためである。GlcNAcは、エンドサイトーシスによって取り込まれ、HBP経路を介してUDP-GlcNAc濃度を上昇させることでN型糖鎖中のLacNAc含量を代償している45

生物学的等価性は、T細胞や自己免疫においても重要である72。MGAT2欠損T細胞ではハイブリッドN型糖鎖が生じるが、このとき、(編集者訳注:複合型構造を有するManα1-3アーム側では)トランスゴルジのβ3GNT酵素の作用によって1本鎖のGlcNAcのポリラクトサミン伸長が顕著に増加する。これによってLacNAc含量が維持され、2本鎖及び3本鎖構造の喪失が代償されるのだ。注目すべきは、MGAT2の変異によってMGAT1以降の経路にある分岐形成が阻害され、余ったUDP-GlcNAcが中間ゴルジからトランスゴルジへと流れていくことだ。結果として、ポリラクトサミンの伸長が促進するのである(図 3)。トランスゴルジにおけるUDP-GlcNAc濃度の増加は、遺伝子発現の変化によらずβ3GNTの酵素活性を高めることになる。中間ゴルジの分岐酵素、およびトランスゴルジのβ3GNT伸長酵素が区画化されていることが、N型糖鎖内のLacNAc含量を維持するための安全装置的なメカニズムとして機能している72。この生物学的等価性のメカニズムは、自己抗原に対するT細胞の感受性を調節し、マウスの自己免疫を防止する上でも重要な役割を果たしている。

図3
図 3. ゴルジ体の自己修正機構によるLacNAcホメオスタシスの維持
ゴルジ体に入るUDP-GlcNAcの大部分は、シス及び中間ゴルジ体にほとんどが局在しているUDP-GlcNAc/UMPアンチポーターのSLC35A3、SLC35B4およびSLC35D2によって、ゴルジ体の初期コンパートメントへと供給される。分岐が盛んに起きる条件下(左)では、UDP-GlcNAcが分岐酵素であるMGAT1、2、4、および5に利用される一方、ポリラクトサミンを合成するB3GNT酵素に供給されるUDP-GlcNAc量は少ない。したがって、結果として生成されるN型糖鎖の配列は、直鎖型LacNAcポリマーよりもLacNAcが分岐型糖鎖上に多く含んだものとなる。遺伝学的あるいは薬理学的に分岐経路が抑制されると(右)、中間ゴルジ体で利用されるUDP-GlcNAc量が減少する。すると、中間ゴルジ以降のゴルジでのUDP-GlcNAcの可用性(availability)が増加するので(少なくとも部分的にはゴルジ体間にある細管を介し)、トランスゴルジに存在するB3GNTファミリーの酵素によって、生物学的に等価なポリラクトサミン含有糖鎖の生成が促進される。したがって、分岐型糖鎖上のLacNAcの消失は、直鎖型LacNAcポリマーの生成量増加によって補われる。この調節は、細胞表面のLacNAc密度およびガレクチン-糖タンパク質格子を維持するための自己修正能であるといえる。T細胞機能という点から見ると、この恒常性維持機構がT細胞の暴走する過活動を抑制し、自己寛容を促進している。

とはいえ、これらの実験結果は、生物学的等価性という性質について疑問を投げかけるものでもある。特に挙げられるのは、糖鎖-レクチン間の相互作用を研究することで生物学的等価性を包括的に理解することができるのか、それとも個々の糖タンパク質について個別に調べる必要があるのか、という点だ。MGAT2の欠損により引き起こされるポリラクトサミンの代償は、生体機能を一様にレスキューするものではない。生殖細胞においてMGAT2を欠損させた場合の表現型は、Mgat5を欠損させた場合よりも著しく重篤なものとなる73,74。また、末梢T細胞活性化の閾値は、MGAT5欠損およびMGAT2欠損T細胞の間で基本的に同じであるが、MGAT2欠損マウスにおけるT細胞発生は、MGAT5欠損マウスに比べて著しく重篤な表現型を示す37,56

このような矛盾を説明するシナリオは、何通りも考えられる。特定の長さのポリラクトサミンの代償性伸長は、実際に3本鎖構造のN型糖鎖と生物学的に等価かもしれないが、一部の受容体や細胞に限った現象なのかもしれない。実際、MGAT2欠損マウスにおける、ポリラクトサミン特異的Lycopersicon esculentumレクチン/アグルチニン(LEL/LEA)の末梢性T細胞、および二重陽性胸腺細胞への結合は、後者の方がN型糖鎖の分岐が約10倍多いにもかかわらず同程度であった37,56。このことは、MGAT2欠損マウスにおけるポリラクトサミン伸長は、末梢性T細胞のような分岐糖鎖生合成活性の低い細胞でのみ効率的に補われることを示しているのかもしれない。高分岐型糖鎖生合成活性が高い細胞種では、分岐型糖鎖の喪失を補うのに十分なポリラクトサミンの伸長が起きていない可能性があり、このことがMGAT5およびMGAT2欠損マウスの間に認められたT細胞発生の違いを生み出しているのかもしれない。

あるいは、ポリラクトサミンの生合成は、全体として適切に行われており、一部の受容体においてのみ生物学的に等価な効果が得られるだけなのかもしれない。このことは、ポリラクトサミンの付加が、糖タンパク質および個々の糖修飾部位のレベルにおいて基質依存的であることを示唆するが、その場合、生物学的等価性という考えであらゆる糖タンパク質の機能を一般化するのは難しくなるかもしれない。重要なのは、今後の研究でこれらマウス由来の様々な細胞種についてガレクチン結合実験を行うことで、上述した2つのシナリオのいずれかであることを大別することであろう。

7. 好気的解糖およびグルタミン分解によるガレクチン格子の制御

1世紀近く前にOtto Warburgが癌について初めて記述した通り、活性化T細胞を含め、急速に増殖している細胞では、酸化的リン酸化が好気的解糖とグルタミン分解へと切り替わる。これにより、細胞内の同化経路が消費するグルコースおよびグルタミンの量が顕著に増加する。グルコースおよびアミン供与体としてのグルタミンはいずれも、HBPにおいてUDP-GlcNAcのde novo合成が起きるために必要であるため、通常の条件下にある非形質転換細胞におけるN型糖鎖の分岐を制限する要因となっている45,54。したがって、好気的解糖およびグルタミン分解の増加は、UDP-GlcNAc生合成へのグルコースおよびグルタミンの流入を抑制し、それによってガレクチン格子強度の低下や受容体量の減少をもたらす(図 2D)。

抗原刺激を受けたT細胞では、好気的解糖とグルタミン分解が協調的にde novoのUDP-GlcNAcの減少、分岐の減少、および格子強度の低下をもたらし、IL-2Rα(CD25)の表面発現レベルを低下させることで、T細胞の増殖を促進するとともに、抗炎症性の調節性T細胞(iTreg)に対する炎症性のTH17細胞の分化比率を上昇させる54,66。このように、好気的解糖とグルタミン分解は、ガレクチン格子の強度、細胞表面のIL-2Rα受容体、および細胞運命の決定に関して、重要な負の調節因子として機能している。しかし、GlcNAcを細胞培養時に添加したりマウスに経口投与したりすると、GlcNAcはHBPに回収されてUDP-GlcNAcが生成される。つまり、HBPにおけるこれらの律速段階が回避され、MSのような自己免疫疾患の治療ターゲットとなるような変化がもたらされるのである。発生や病気の過程でプログラムされた複合糖質の異化は、GlcNAcの可用性(availability)を高めることで、ガレクチン格子の強度を上昇させるとともに受容体数を増やし、TH17やiTreg細胞数をコントロールしているのかもしれない。例えば、インフルエンザ感染に伴う肺機能障害の重症度は、ヒアルロン酸の早期蓄積と相関しており、GlcNAcを遊離するヒアルロニダーゼで治療すると、体重と肺機能の回復が早くなる75。複合糖質のターンオーバーやGlcNAc回収の役割については、さらなる研究が必要である。

8. N-アセチルグルコサミンはミエリン形成を促進し、MSにおける神経変性の抑制に関与している

ガレクチン格子は、オリゴデンドロサイト前駆細胞において、オリゴデンドロサイトへの分化に重要な役割を果たしている血小板由来成長因子受容体(platelet-derived growth factor receptor : PDGFR)の表面保持を促進することでミエリン形成を促している76。マウスにおいて、Gal-3を全身で欠損させる、あるいはオリゴデンドロサイト前駆細胞でのみMgat1分岐酵素のノックアウトを誘導して格子を破壊すると、オリゴデンドロサイトの産生が減少するとともに、軸索における一次性のミエリン形成が低下する76,77

同様に、HBP経路のUDP-GlcNAc産生において重要な酵素である、ヒトのホスホアセチルグルコサミンムターゼ(PGM3)の機能喪失変異は、分岐の減少と重度のミエリン形成不全をもたらす78。また、授乳中の雌マウスにGlcNAcを与えると母乳中に分泌される。すると、授乳中の仔マウスの腸から全身的に吸収された後、血液脳関門を通過し、脳内でUDP-GlcNAcへと代謝され、仔マウスの一次性ミエリン形成が促進される76。興味深いことに、GlcNAcはヒトの母乳オリゴ糖の主要な成分の1つであり79、乳児の微生物叢によって単糖として放出されることがある80。一方で、GlcNAcは市販の育児用粉ミルクにはあまり含まれていない。母乳育児によってミエリン形成および認知機能が向上するという関連性が知られているが、その要因の1つが、ヒトの母乳中にGlcNAcが含まれていることと考えられる。

MS患者では、脱髄後におけるミエリンの再形成不全が、軸索損傷を進行させ、神経変性を引き起こし、さらには進行性の機能障害を引き起こす。MSのマウスモデルでは、脱髄を起こしたマウスにGlcNAcを経口投与すると、ミエリンの修復が促進されるとともに、軸索の損傷が減少し、機能回復が促された。ヒトのMSは、2つの主要なサブタイプに分類される。すなわち、炎症性の脱髄エピソードが見られる「再発寛解型MS」、および神経変性がゆっくりと進行していく「進行型MS」である。注目すべきは、GlcNAcとその立体異性体であるGalNAcおよびManNAcを含む、N-アセチルヘキソサミン(HexNAc)の血清中濃度が、進行型MS患者では、健康対照者および再発寛解型MS患者と比べて著しく低いことである81。また、血清中HexNAc濃度の低さは、MSにおいて神経変性を示す複数の指標、すなわち、総合障害度スケール(EDSS)スコアの悪化、視床体積の低下、および網膜神経線維層の菲薄化と相関していた。さらに、ベースラインにおける血清濃度の低さは、18ヵ月後における脳体積減少割合の大きさと相関していた。

このように、経口GlcNAc投与は、炎症性のT細胞およびB細胞応答を負に制御することと関連して、MSの病因および重症化を引き起こす4つの主要なメカニズム、すなわち、炎症性のT細胞応答、自然免疫における炎症性のB細胞活性、ミエリン修復の不全、および神経変性を抑制するユニークな手段といえる。このような多様な作用機序は、炎症反応は標的としているがミエリン修復や神経変性は標的としていない現在のMS治療薬にはないものであり、GlcNAcがMS患者の治療に有益であることを示唆している。この可能性を追求するため、Dr. Michael Demetriouが中心となり、MS患者に対するGlcNAc経口投与の非盲検臨床試験が、現在行われている。経口GlcNAcは忍容性が高いことが示されているほか、血清GlcNAcレベルを上昇させ、臨床的に有益な効果が認められた可能性がある。これらの知見を確認するために、追加の盲検試験が計画されている。

終わりに

ガレクチン格子モデルは、複雑な糖鎖生物学のアプローチとして強力で予測可能なフレームワークであり、細胞表面の動態における糖修飾の役割、さらに糖タンパク質生合成経路の制御論理の両者について、洞察を与えてくれる。しかし、その構造、機能、制御、および制御不全については多くの疑問が残されている。例えば、ガレクチン家系を構成する各メンバーの貢献度や、ガレクチン格子内に存在するかもしれないサブネットワークを調べるには、ガレクチン―糖タンパク質間相互作用に内在する弱い相互作用を、高解像度でマッピングするためのより優れた方法が必要となる。プロテオミクスのアプローチでは、細胞表面の格子をネイティブな状態で捉えることができない一方、個々の受容体に焦点を当てたロースループットのアプローチでは、シグナル伝達経路間にある相互作用をより大きなネットワークとして理解することができない。今後、糖タンパク質のレベルからグリコフォーム分布のレベルにまで解像度が向上すると、ガレクチン格子について興味深い新たな知見が生まれ、発生、加齢、および疾患の理解に貢献することが期待される。

謝辞

J.W.D.の研究は、カナダ・Canadian Institutes of Health Research(MOP-126183、MOP-136789、MOP-126029)の助成金およびCanada Research Chairs Programによって支援されている。M.D.の研究は、米国・National Institute of Allergy and Infectious Diseases(R01 AI108917)および米・National Center for Complementary and Integrative Health)(R01 AT007452)によって支援されている。


References

  1. Ochieng, J., Platt, D., Tait, L., Hogan, V., Raz, T., Carmi, P., and Raz, A. (1993) Structure-function relationship of a recombinant human galactoside-binding protein. Biochemistry 32, 4455-4460
  2. Raz, A., Carmi, P., and Pazerini, G. (1988) Expression of two different endogenous galactoside-binding lectins sharing sequence homology. Cancer Res 48, 645-649
  3. Barondes, S. H., Cooper, D. N., Gitt, M. A., and Leffler, H. (1994) Galectins. Structure and function of a large family of animal lectins. J Biol Chem 269, 20807-20810
  4. Seetharaman, J., Kanigsberg, A., Slaaby, R., Leffler, H., Barondes, S. H., and Rini, J. M. (1998) X-ray crystal structure of the human galectin-3 carbohydrate recognition domain at 2.1-A resolution. J Biol Chem 273, 13047-13052
  5. Grigorian, A., and Demetriou, M. (2010) Manipulating cell surface glycoproteins by targeting N-glycan-galectin interactions. Methods Enzymol. 480, 245-266
  6. Nabi, I. R., Shankar, J., and Dennis, J. W. (2015) The galectin lattice at a glance. J Cell Sci 128, 2213-2219
  7. Cooper, D. N. (2002) Galectinomics: finding themes in complexity. Biochim Biophys Acta 1572, 209-231
  8. Vasta, G. R. (2020) Galectins in Host-Pathogen Interactions: Structural, Functional and Evolutionary Aspects. Adv Exp Med Biol 1204, 169-196
  9. Thurston, T. L., Wandel, M. P., von Muhlinen, N., Foeglein, A., and Randow, F. (2012) Galectin 8 targets damaged vesicles for autophagy to defend cells against bacterial invasion. Nature 482, 414-418
  10. Kim, B. W., Hong, S. B., Kim, J. H., Kwon, D. H., and Song, H. K. (2013) Structural basis for recognition of autophagic receptor NDP52 by the sugar receptor galectin-8. Nat Commun 4, 1613
  11. Thurston, T. L., Boyle, K. B., Allen, M., Ravenhill, B. J., Karpiyevich, M., Bloor, S., Kaul, A., Noad, J., Foeglein, A., Matthews, S. A., Komander, D., Bycroft, M., and Randow, F. (2016) Recruitment of TBK1 to cytosol-invading Salmonella induces WIPI2-dependent antibacterial autophagy. EMBO J 35, 1779-1792
  12. Herrmann, J., Turck, C. W., Atchison, R. E., Huflejt, M. E., Poulter, L., Gitt, M. A., Burlingame, A. L., Barondes, S. H., and Leffler, H. (1993) Primary structure of the soluble lactose binding lectin L-29 from rat and dog and interaction of its non-collagenous proline-, glycine-, tyrosine-rich sequence with bacterial and tissue collagenase. J Biol Chem 268, 26704-26711
  13. Lin, Y. H., Qiu, D. C., Chang, W. H., Yeh, Y. Q., Jeng, U. S., Liu, F. T., and Huang, J. R. (2017) The intrinsically disordered N-terminal domain of galectin-3 dynamically mediates multisite self-association of the protein through fuzzy interactions. J Biol Chem 292, 17845-17856
  14. Ahmad, N., Gabius, H. J., Andre, S., Kaltner, H., Sabesan, S., Roy, R., Liu, B., Macaluso, F., and Brewer, C. F. (2003) Galectin-3 precipitates as a pentamer with synthetic multivalent carbohydrates and forms heterogeneous cross-linked complexes. J.Biol.Chem. 279, 10841-10847
  15. Halimi, H., Rigato, A., Byrne, D., Ferracci, G., Sebban-Kreuzer, C., ElAntak, L., and Guerlesquin, F. (2014) Glycan dependence of Galectin-3 self-association properties. PLoS One 9, e111836
  16. Lepur, A., Salomonsson, E., Nilsson, U. J., and Leffler, H. (2012) Ligand induced galectin-3 protein self-association. J Biol Chem 287, 21751-21756
  17. Leppanen, A., Stowell, S., Blixt, O., and Cummings, R. D. (2005) Dimeric galectin-1 binds with high affinity to alpha2,3-sialylated and non-sialylated terminal N-acetyllactosamine units on surface-bound extended glycans. J Biol Chem 280, 5549-5562
  18. Dennis, J. W., and Brewer, C. F. (2013) Density-dependent lectin-glycan interactions as a paradigm for conditional regulation by posttranslational modifications. Mol Cell Proteomics 12, 913-920
  19. Demetriou, M., Granovsky, M., Quaggin, S., and Dennis, J. W. (2001) Negative regulation of T-cell activation and autoimmunity by Mgat5 N-glycosylation. Nature 409, 733-739
  20. Li, P., Banjade, S., Cheng, H. C., Kim, S., Chen, B., Guo, L., Llaguno, M., Hollingsworth, J. V., King, D. S., Banani, S. F., Russo, P. S., Jiang, Q. X., Nixon, B. T., and Rosen, M. K. (2012) Phase transitions in the assembly of multivalent signalling proteins. Nature 483, 336-340
  21. Dennis, J. W. (2015) Many Light Touches Convey the Message. Trends Biochem Sci 40, 673-686
  22. Guttman, M., Weinkam, P., Sali, A., and Lee, K. K. (2013) All-atom ensemble modeling to analyze small-angle x-ray scattering of glycosylated proteins. Structure 21, 321-331
  23. Diehl, C., Genheden, S., Modig, K., Ryde, U., and Akke, M. (2009) Conformational entropy changes upon lactose binding to the carbohydrate recognition domain of galectin-3. J Biomol NMR 45, 157-169
  24. Diehl, C., Engstrom, O., Delaine, T., Hakansson, M., Genheden, S., Modig, K., Leffler, H., Ryde, U., Nilsson, U. J., and Akke, M. (2010) Protein flexibility and conformational entropy in ligand design targeting the carbohydrate recognition domain of galectin-3. J Am Chem Soc 132, 14577-14589
  25. Lajoie, P., Partridge, E. A., Guay, G., Goetz, J. G., Pawling, J., Lagana, A., Joshi, B., Dennis, J. W., and Nabi, I. R. (2007) Plasma membrane domain organization regulates EGFR signaling in tumor cells. J Cell Biol 179, 341-356
  26. Johswich, A., Longuet, C., Pawling, J., Rahman, A. A., Ryczko, M., Drucker, D. J., and Dennis, J. W. (2014) N-Glycan Remodeling on Glucagon Receptor Is an Effector of Nutrient Sensing by the Hexosamine Biosynthesis Pathway. J Biol Chem 289, 15927-15941
  27. Nieminen, J., Kuno, A., Hirabayashi, J., and Sato, S. (2007) Visualization of galectin-3 oligomerization on the surface of neutrophils and endothelial cells using fluorescence resonance energy transfer. J Biol Chem 282, 1374-1383
  28. Yang, E. H., Rode, J., Howlader, M. A., Eckermann, M., Santos, J. T., Hernandez Armada, D., Zheng, R., Zou, C., and Cairo, C. W. (2017) Galectin-3 alters the lateral mobility and clustering of beta1-integrin receptors. PLoS One 12, e0184378
  29. Lagana, A., Goetz, J. G., Cheung, P., Raz, A., Dennis, J. W., and Nabi, I. R. (2006) Galectin binding to Mgat5-modified N-glycans regulates fibronectin matrix remodeling in tumor cells. Mol Cell Biol 26, 3181-3193
  30. Boscher, C., and Nabi, I. R. (2013) Galectin-3- and phospho-caveolin-1-dependent outside-in integrin signaling mediates the EGF motogenic response in mammary cancer cells. Mol Biol Cell 24, 2134-2145
  31. Snarr, B. D., St-Pierre, G., Ralph, B., Lehoux, M., Sato, Y., Rancourt, A., Takazono, T., Baistrocchi, S. R., Corsini, R., Cheng, M. P., Sugrue, M., Baden, L. R., Izumikawa, K., Mukae, H., Wingard, J. R., King, I. L., Divangahi, M., Satoh, M. S., Yipp, B. G., Sato, S., and Sheppard, D. C. (2020) Galectin-3 enhances neutrophil motility and extravasation into the airways during Aspergillus fumigatus infection. PLoS Pathog 16, e1008741
  32. Marhuenda, E., Fabre, C., Zhang, C., Martin-Fernandez, M., Iskratsch, T., Saleh, A., Bauchet, L., Cambedouzou, J., Hugnot, J. P., Duffau, H., Dennis, J. W., Cornu, D., and Bakalara, N. (2021) Glioma stem cells invasive phenotype at optimal stiffness is driven by MGAT5 dependent mechanosensing. J Exp Clin Cancer Res 40, 139
  33. Zick, Y., Eisenstein, M., Goren, R. A., Hadari, Y. R., Levy, Y., and Ronen, D. (2002) Role of galectin-8 as a modulator of cell adhesion and cell growth. Glycoconj J 19, 517-526
  34. Levy, Y., Arbel-Goren, R., Hadari, Y. R., Eshhar, S., Ronen, D., Elhanany, E., Geiger, B., and Zick, Y. (2001) Galectin-8 functions as a matricellular modulator of cell adhesion. J.Biol.Chem. 276, 31285-31295
  35. Chen, I. J., Chen, H. L., and Demetriou, M. (2007) Lateral compartmentalization of T cell receptor versus CD45 by galectin-N-glycan binding and microfilaments coordinate basal and activation signaling. J Biol Chem 282, 35361-35372
  36. Demetriou, M., Granovsky, M., Quaggin, S., and Dennis, J. W. (2001) Negative regulation of T-cell activation and autoimmunity by Mgat5 N-glycosylation. Nature 409, 733-739
  37. Zhou, R. W., Mkhikian, H., Grigorian, A., Hong, A., Chen, D., Arakelyan, A., and Demetriou, M. (2014) N-glycosylation bidirectionally extends the boundaries of thymocyte positive selection by decoupling Lck from Ca(2)(+) signaling. Nat Immunol 15, 1038-1045
  38. Hirabayashi, J., Hashidate, T., Arata, Y., Nishi, N., Nakamura, T., Hirashima, M., Urashima, T., Oka, T., Futai, M., Muller, W. E., Yagi, F., and Kasai, K. (2002) Oligosaccharide specificity of galectins: a search by frontal affinity chromatography. Biochim.Biophys.Acta 1572 232 -254
  39. Lee, R. T., and Lee, Y. C. (2000) Affinity enhancement by multivalent lectin-carbohydrate interaction. Glycoconj J 17, 543-551
  40. Dam, T. K., and Brewer, C. F. (2008) Effects of clustered epitopes in multivalent ligand-receptor interactions. Biochemistry 47, 8470-8476
  41. Patnaik, S. K., Potvin, B., Carlsson, S., Sturm, D., Leffler, H., and Stanley, P. (2006) Complex N-glycans are the major ligands for galectin-1, -3, and -8 on Chinese hamster ovary cells. Glycobiology 16, 305-317
  42. Do, K.-Y., Fregien, N., Pierce, M., and Cummings, R. D. (1994) Modification of glycoproteins by N-acetylglucosaminyltransferase V is greatly influenced by accessibility of the enzyme to oligosacharide acceptors. J.Biol.Chem. 269, 23456-23464
  43. Losfeld, M. E., Scibona, E., Lin, C. W., Villiger, T. K., Gauss, R., Morbidelli, M., and Aebi, M. (2017) Influence of protein/glycan interaction on site-specific glycan heterogeneity. FASEB J 31, 4623-4635
  44. Yu, R., Longo, J., van Leeuwen, J. E., Zhang, C., Branchard, E., Elbaz, M., Cescon, D. W., Drake, R. R., Dennis, J. W., and Penn, L. Z. (2021) Mevalonate pathway inhibition slows breast cancer metastasis via reduced N-glycosylation abundance and branching. Cancer Res
  45. Lau, K. S., Partridge, E. A., Grigorian, A., Silvescu, C. I., Reinhold, V. N., Demetriou, M., and Dennis, J. W. (2007) Complex N-glycan number and degree of branching cooperate to regulate cell proliferation and differentiation. Cell 129, 123-134
  46. Varki, A. (2011) Evolutionary forces shaping the Golgi glycosylation machinery: why cell surface glycans are universal to living cells. Cold Spring Harb Perspect Biol 3
  47. Schachter, H. (1986) Biosynthetic controls that determine the branching and microheterogeneity of protein-bound oligosaccharides. Biochem.Cell Biol. 64, 163-181
  48. Sasai, K., Ikeda, Y., Fujii, T., Tsuda, T., and Taniguchi, N. (2002) UDP-GlcNAc concentration is an important factor in the biosynthesis of beta1,6-branched oligosaccharides: regulation based on the kinetic properties of N-acetylglucosaminyltransferase V. Glycobiology 12, 119 -127
  49. Hassinen, A., and Kellokumpu, S. (2014) Organizational interplay of Golgi N-glycosyltransferases involves organelle microenvironment-dependent transitions between enzyme homo- and heteromers. J Biol Chem 289, 26937-26948
  50. Climer, L. K., Dobretsov, M., and Lupashin, V. (2015) Defects in the COG complex and COG-related trafficking regulators affect neuronal Golgi function. Front Neurosci 9, 405
  51. Zhen, Y., Caprioli, R. M., and Staros, J. V. (2003) Characterization of glycosylation sites of the epidermal growth factor receptor. Biochemistry 42, 5478-5492
  52. Valiant, L. (2013) Probably Approximately Correct: Nature's Algorithms for Learning and Prospering in a Complex World, Basic Books, Inc. , New York, NY
  53. Zhang, F., Wang, S., Yin, L., Yang, Y., Guan, Y., Wang, W., Xu, H., and Tao, N. (2015) Quantification of epidermal growth factor receptor expression level and binding kinetics on cell surfaces by surface plasmon resonance imaging. Anal Chem 87, 9960-9965
  54. Araujo, L., Khim, P., Mkhikian, H., Mortales, C. L., and Demetriou, M. (2017) Glycolysis and glutaminolysis cooperatively control T cell function by limiting metabolite supply to N-glycosylation. Elife 6
  55. Grigorian, A., Lee, S. U., Tian, W., Chen, I. J., Gao, G., Mendelsohn, R., Dennis, J. W., and Demetriou, M. (2007) Control of T Cell-mediated autoimmunity by metabolite flux to N-glycan biosynthesis. J Biol Chem 282, 20027-20035
  56. Mkhikian, H., Grigorian, A., Li, C. F., Chen, H. L., Newton, B., Zhou, R. W., Beeton, C., Torossian, S., Tatarian, G. G., Lee, S. U., Lau, K., Walker, E., Siminovitch, K. A., Chandy, K. G., Yu, Z., Dennis, J. W., and Demetriou, M. (2011) Genetics and the environment converge to dysregulate N-glycosylation in multiple sclerosis. Nat Commun 2, 334
  57. Ohtsubo, K., Takamatsu, S., Gao, C., Korekane, H., Kurosawa, T. M., and Taniguchi, N. (2013) N-Glycosylation modulates the membrane sub-domain distribution and activity of glucose transporter 2 in pancreatic beta cells. Biochem Biophys Res Commun 434, 346-351
  58. Ohtsubo, K., Takamatsu, S., Minowa, M. T., Yoshida, A., Takeuchi, M., and Marth, J. D. (2005) Dietary and genetic control of glucose transporter 2 glycosylation promotes insulin secretion in suppressing diabetes. Cell 123, 1307-1321
  59. Takamatsu, S., Oguri, S., Minowa, M. T., Yoshida, A., Nakamura, K., Takeuchi, M., and Kobata, A. (1999) Unusually high expression of N-acetylglucosaminyltransferase-IV a in human choriocarcinoma cell lines: a possible enzymatic basis of the formaiton of abnormal biantennary sugar chain. Cancer Research 59, 3949-3953
  60. Ohno, M., Nishikawa, A., Koketsu, M., Taga, H., Endo, Y., Hada, T., Higashino, K., and Taniguchi, N. (1992) Enzymatic basis of sugar structures of alpha-fetoprotein in hepatoma and hepatoblastoma cell lines: correlation with activities of alpha 1-6 fucosyltransferase and N-acetylglucosaminyltransferases III and V. Int.J.Cancer 51, 315-317
  61. Lau, K. S., and Dennis, J. W. (2008) N-Glycans in cancer progression. Glycobiology 18, 750-760
  62. Ryczko, M. C., Pawling, J., Chen, R., Abdel Rahman, A. M., Yau, K., Copeland, J. K., Zhang, C., Surendra, A., Guttman, D. S., Figeys, D., and Dennis, J. W. (2016) Metabolic Reprogramming by Hexosamine Biosynthetic and Golgi N-Glycan Branching Pathways. Sci Rep 6, 23043
  63. Dennis, J. W. (2017) Genetic code asymmetry supports diversity through experimentation with posttranslational modifications. Curr Opin Chem Biol 41, 1-11
  64. Lee, S. U., Grigorian, A., Pawling, J., Chen, I. J., Gao, G., Mozaffar, T., McKerlie, C., and Demetriou, M. (2007) N-glycan processing deficiency promotes spontaneous inflammatory demyelination and neurodegeneration. J Biol Chem 282, 33725-33734
  65. Grigorian, A., Araujo, L., Naidu, N. N., Place, D., Choudhury, B., and Demetriou, M. (2011) N-acetylglucosamine inhibits T-helper 1 (Th1) / T-helper 17 (Th17) responses and treats experimental autoimmune encephalomyelitis. J. Biol. Chem. 286, 40133-40141
  66. Grigorian, A., Lee, S. U., Tian, W., Chen, I. J., Gao, G., Mendelsohn, R., Dennis, J. W., and Demetriou, M. (2007) Control of T Cell-mediated autoimmunity by metabolite flux to N-glycan biosynthesis. J Biol Chem 282, 20027-20035
  67. Morgan, R., Gao, G., Pawling, J., Dennis, J. W., Demetriou, M., and Li, B. (2004) N-acetylglucosaminyltransferase V (Mgat5)-mediated N-glycosylation negatively regulates Th1 cytokine production by T cells. J Immunol 173, 7200-7208
  68. Mortales, C. L., Lee, S. U., and Demetriou, M. (2020) N-Glycan Branching Is Required for Development of Mature B Cells. J Immunol 205, 630-636
  69. Mortales, C. L., Lee, S. U., Manousadjian, A., Hayama, K. L., and Demetriou, M. (2020) N-Glycan Branching Decouples B Cell Innate and Adaptive Immunity to Control Inflammatory Demyelination. iScience 23, 101380
  70. Li, C. F., Zhou, R. W., Mkhikian, H., Newton, B. L., Yu, Z., and Demetriou, M. (2013) Hypomorphic MGAT5 polymorphisms promote multiple sclerosis cooperatively with MGAT1 and interleukin-2 and 7 receptor variants. J Neuroimmunol 256, 71-76
  71. Backer-Koduah, P., Infante-Duarte, C., Ivaldi, F., Uccelli, A., Bellmann-Strobl, J., Wernecke, K. D., Sy, M., Demetriou, M., Dorr, J., Paul, F., and Ulrich Brandt, A. (2020) Effect of vitamin D supplementation on N-glycan branching and cellular immunophenotypes in MS. Ann Clin Transl Neurol 7, 1628-1641
  72. Mkhikian, H., Mortales, C. L., Zhou, R. W., Khachikyan, K., Wu, G., Haslam, S. M., Kavarian, P., Dell, A., and Demetriou, M. (2016) Golgi self-correction generates bioequivalent glycans to preserve cellular homeostasis. Elife 5
  73. Chui, D., Oh-Eda, M., Liao, Y.-F., Panneerselvam, K., Lal, A., Marek, K. W., Freeze, H. H., Moremen, K. W., Fukuda, M. N., and Marth, J. D. (1997) Alpha-mannosidase-II deficiency results in dyserythropoiesis and unveils an alternate pathway in oligosaccharide biosynthesis. Cell 90, 157-167
  74. Granovsky, M., Fata, J., Pawling, J., Muller, W. J., Khokha, R., and Dennis, J. W. (2000) Suppression of tumor growth and metastasis in Mgat5-deficient mice. Nat Med 6, 306-312
  75. Bell, T. J., Brand, O. J., Morgan, D. J., Salek-Ardakani, S., Jagger, C., Fujimori, T., Cholewa, L., Tilakaratna, V., Ostling, J., Thomas, M., Day, A. J., Snelgrove, R. J., and Hussell, T. (2019) Defective lung function following influenza virus is due to prolonged, reversible hyaluronan synthesis. Matrix Biol 80, 14-28
  76. Sy, M., Brandt, A. U., Lee, S. U., Newton, B. L., Pawling, J., Golzar, A., Rahman, A. M. A., Yu, Z., Cooper, G., Scheel, M., Paul, F., Dennis, J. W., and Demetriou, M. (2020) N-acetylglucosamine drives myelination by triggering oligodendrocyte precursor cell differentiation. J Biol Chem 295, 17413-17424
  77. Pasquini, L. A., Millet, V., Hoyos, H. C., Giannoni, J. P., Croci, D. O., Marder, M., Liu, F. T., Rabinovich, G. A., and Pasquini, J. M. (2011) Galectin-3 drives oligodendrocyte differentiation to control myelin integrity and function. Cell Death Differ 18, 1746-1756
  78. Zhang, Y., Yu, X., Ichikawa, M., Lyons, J. J., Datta, S., Lamborn, I. T., Jing, H., Kim, E. S., Biancalana, M., Wolfe, L. A., DiMaggio, T., Matthews, H. F., Kranick, S. M., Stone, K. D., Holland, S. M., Reich, D. S., Hughes, J. D., Mehmet, H., McElwee, J., Freeman, A. F., Freeze, H. H., Su, H. C., and Milner, J. D. (2014) Autosomal recessive phosphoglucomutase 3 (PGM3) mutations link glycosylation defects to atopy, immune deficiency, autoimmunity, and neurocognitive impairment. J Allergy Clin Immunol 133, 1400-1409, 1409 e1401-1405
  79. Miller, J. B., Bull, S., Miller, J., and McVeagh, P. (1994) The oligosaccharide composition of human milk: temporal and individual variations in monosaccharide components. J Pediatr Gastroenterol Nutr 19, 371-376
  80. Lawson, M. A. E., O'Neill, I. J., Kujawska, M., Gowrinadh Javvadi, S., Wijeyesekera, A., Flegg, Z., Chalklen, L., and Hall, L. J. (2020) Breast milk-derived human milk oligosaccharides promote Bifidobacterium interactions within a single ecosystem. ISME J 14, 635-648
  81. Brandt, A. U., Sy, M., Bellmann-Strobl, J., Newton, B. L., Pawling, J., Zimmermann, H. G., Yu, Z., Chien, C., Dorr, J., Wuerfel, J. T., Dennis, J. W., Paul, F., and Demetriou, M. (2021) Association of a Marker of N-Acetylglucosamine With Progressive Multiple Sclerosis and Neurodegeneration. JAMA Neurol
top