図.1 FACの原理:レクチンなどのリガンドを固定化したカラムに一定濃度([A]0)の A を流し続ける。もし、A が B と全く相互作用しない場合はV0 だけ流したところで A の溶出前端(図中平坦部の半分の濃度を与える位置)が現れるが、相互作用がある場合には溶出前端位置(V)はV-V0 分だけ遅れる。[A]0が十分小さいとき([A]0 << Kd)、V-V0 値はFACの基本式(3)から結合定数(解離定数の逆数)に比例した値となる。
高性能FACはレクチンを固定化しても、逆に糖質を固定化しても実施可能である。しかし、一般に固定化レクチンカラムを調製し、これに様々な構造の標識糖鎖を流し親和性を比較する方が需要が多く、また問題も比較的少ないようである。因みに、レクチンを糖質固定化カラムに流す場合、蛍光検出のためトリプトファンを含むことが前提となる。検出に必要なタンパク濃度は1μg/mlで十分なため、数マイクログラムの試料があればよい。一方、レクチンを固定化する際にはレクチンの安定性やオリゴマー形成の多様化など、いくつかの点に留意しなければならない。特に活性化ゲル(Pharmacia社製、HiTrap NHS-activatedなど)とレクチン間で多点結合が形成されると有効リガンド量 Bt が著しく低下することがあるので注意が必要である。この場合、固定化時に Tris などのアミン類を共存させることで改善が見られる場合が多い。予め固定化反応に関わるリジン残基の分布を調べておくことも重要だろう。有効リガンド量 Bt を固定化量(mol)で割った値は有効リガンド率と呼ばれ、通常20-60%の範囲となる。
Kd、Btを求めるには、ある親和性を持った糖の濃度を変化させLineweber-Burk型のプロット、もしくはV-V0 vs. [A]0(V-V0) のWoolfe-Hofstee型プロット(こちらの方が一般に得られる回帰直線の直線性は悪いが信頼度は高い)を行う。しかし、一般に入手可能な、しかも安価な標識糖(p-アミノフェニルβラクトシドなど。この場合は紫外吸収A280による検出を行う)は限られている。もし、一定量の非標識糖鎖が手に入れば、これを一定濃度の標識糖鎖と混合させ上記濃度解析を行うことが可能である。ただし、この場合レクチンの両糖鎖に対する親和性が本質的に同一であることを確かめておく必要がある。一方、糖の初濃度 [A]0 が用いるレクチン B に対する Kd と比べ十分小さい(Kd >> [A]0 )とき、FACの基本式(1)は(3)の様に近似でき、各オリゴ糖とレクチン間の親和力は単にV-V0に比例した値と考えて差し支えない。
平林 淳(帝京大学・薬学部)
References
(1)
Kasai K, Oda Y, Nishikawa S, Ishii S : Theory for its application to studies on specific interaction of biomolecules. J. Chromatogr. 376, 33-47, 1986
(2)
Hirabayashi J, Arata Y, Kasai, Y : Reinforcement of frontal affinity chromatography for effective analysis of lectin-oligosaccharide interactions. J. Chromatogr. A, 890, 261-271, 2000
(3)
Arata Y, Hirabayashi J, Kasai K : Sugar binding properties of the two lectin domains of the tandem repeat-type galectin LEC-1 (N32) of Caenorhabditis elegans. J. Biol. Chem. 276, 3068-3077, 2001
(4)
Schriemer DC, Bundle DR, Li L, Hindsgaul O : Micro-scale frontal affinity chromatography with mass spectrometric detection: a new method for the screening of compound libraries. Angew. Chem. Int. Ed. 37 (1998), 3383-3387,1998